カテゴリ:投資や投機や貯蓄について の記事一覧

積立王子の記事に納得がいかない

積立王子こと中野晴啓氏の「長期投資に相場観は不要」という記事を読みました。中野晴啓氏はセゾン投信の社長です。

セゾン投信はフィデューシャリー宣言を行っています。

セゾン投信のサイトには「『お客さまのために』のみ業務を行う者として必要な専門性と倫理観を持った人材を育成し、そうした観点からの適切な人事評価を行います」とあります。

今回は、専門性と倫理観について


積立王子の主張


中野晴啓氏は「長期投資に相場観は不要 コツコツ運用が成功の近道」の中でこう述べています。[外部記事]

長期資産形成の成否を決める重要なデータがあります。長期の運用の場合、投資タイミングの良しあしや銘柄選択の巧拙がリターンに影響する割合は1割程度にすぎず、成果の大半は適切な資産配分に依拠するという歴史的事実です。これは現代証券投資理論上で立証されています。


んー

大変失礼なんですけど、本当に「必要な専門性」を持っているのかな・・・と疑問に思います。


ブリンソンの論文


成果の大半は適切な資産配分に依拠するというのは、資産配分でパフォーマンスの9割が決まる、と出典は同じです。

1986年のブリンソン(Brinson)らの研究です。[論文] (pdfファイル)

興味ある方はご一読をお勧めします。

この論文で検証したのは、(1)実際のポートフォリオと、(2)資産配分と銘柄選択をパッシブにした基本ポートフォリオ、の四半期ごとのリターンを計測し、その10年分、40個のデータを計測した結果です。

測定した結果、相関係数の二乗が93.6%だった、ということです。

分かりにくいですね。もうちょっとご辛抱ください。


タイミング効果


話を単純化して、株式:債券=50:50を基本ポートフォリオとします。

実際のポートフォリオは、時価変動があるので株式:債券=51:49だったり、52:48になったり、逆に49:51になったりします。

あるいは意図的に基本ポートフォリオから乖離させて、株式:債券=52:48にしたりします。TAAと呼ばれるものですね。

この乖離による部分を、ブリンソンの研究ではタイミング効果としています。

よっしゃー!

乾坤一擲、ここで買い!

みたいなタイミング投資とは別の話です。


タイミング効果


さて、ここで考えを整理。

タイミング効果について

ブリンソンの論文でのタイミング効果は、基本ポートフォリオからのウェイト乖離の効果です。その影響度は相対的に小さいです。

株式:債券=52:48のポートフォリオと、株式:債券=50:50の基本ポートフォリオがあって、四半期ごとにリターンを測れば、相関は高いですよね。

仮にキャッシュ比率を含めて資産配分を大幅に変えるような運用をすれば、相関が低くなるので資産配分で9割とはならないです。(シミュレーションで検証できます)


資産配分が同じでも


中野氏は、長期的な投資の成果について、成果の大半は適切な資産配分に依拠すると述べます。一読すると投資のタイミングはそれほど重要ではなく、資産配分こそ重要だと思えますね。

ところが、こう考えるとどうでしょう。

同じ資産配分(同じバランス型投資信託でもいいです)の投資家AさんとBさんがいます。

Aさんはリーマンショック前の2007年に投資しました。
Bさんはアベノミクスの始まりの2013年に投資しました。

2人のパフォーマンスはどうでしょう。

同じ資産配分でも、投資したタイミングによって出来上がりのパフォーマンスは大きく違います。Bさんの方が投資タイミングが良かったです。


思うこと


長期の運用の場合、投資タイミングの良しあしや銘柄選択の巧拙がリターンに影響する割合は1割程度にすぎないというのが中野氏の主張ですが・・・

んー

私は納得いかないです。

ブリンソンの論文を都合よく解釈して使っているように思えるんです。

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高齢層向け元本取り崩しは定着するか 記事に思うこと

高齢者向けの運用しながら取り崩すファンドについて、日経に興味深い記事がありました。

「高齢層向け元本取り崩しは定着するか」です。[外部記事]

いい記事でした。

今回は、高齢者向けの金融サービスについての雑感です。


運用しながら取り崩す


運用しながら資産を取り崩すことを明確に打ち出したファンドが登場しています。

これまでの毎月分配型や隔月分配型は、取り崩しの説明が明確ではなかったです。それに対して、新しいタイプのファンドは取り崩しを明確にうたっています。なお、毎月分配型は一定額の分配であるのに対し、新しいタイプは一定率の分配です。

「ライフ・ジャーニー」というファンドは、「短期金利相当分+年3%」を中長期的な目標リターンとしています。目標分配率は年6%です。定率分配ですね。

そのファンドに関連した部分を引用します。

留意事項として「中長期的な目標リターンを達成した場合においても、それよりも多くを分配(資金払い出し)するため、実質投資元本の取り崩しになる。そのため、投資元本は小さくなり、結果的におおむね分配の都度、分配金の金額は小さくなっていく」と目論見書に明記している。


目論見書に「実質投資元本の取り崩しになる」と明記しているんですね。

分かりやすさの点ではいいと思います。


定額と定率


分配が基準価額で○円といった一定額か、元本に対して○%といった定率か。

本質的な違いはあまりないでしょう。

定額か定率かといった違いは、分配するかしないかといった違いの前には些細なことに思えます。

なので、課税タイミングが早いとか複利の効果が働きにくいとか、これまで毎月分配に寄せられていた批判はそのまま定率の新ファンドも当てはまります。

そこは留意点です。


高齢者向けの投信


資産形成期の若い人たちは無分配型(再投資型)の方がいいでしょう。

一方、高齢者には分配型がいい場合もあります。

無分配(再投資)がいいか、分配型がいいかは選好の問題ですね。好きな方を選べばいい話だと思うんです。

以前も書きましたが、低コストのインデックスファンドで、年率5%~6%くらいの毎月分配(隔月分配)のファンドがあれば投資するかもしれません。[参考過去記事]


思うこと


日経記事は「果たして、『元本の取り崩し』は今後、高齢層を中心とした投資家にどう受け入れられ、定着していくのだろうか。」と結んでいます。

その点は気になります。

預貯金に置いて取り崩すか、個別株に投資して運用しながら取り崩すか、投信を使って(元本の取り崩しを含む)分配を受け取るかの違いはあるにしても、ある程度の年齢になれば蓄えを取り崩していく時期は来ます。

将来的な選択肢の一つとして分配型投信もありかなと思ってます。

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インデックス型ファンドと思考停止 投資と投機

インデックス型ファンドと思考停止を関連付けた記事が話題になっています。

「『思考停止』のインデックス型ファンドが危険な理由」という記事です。[外部記事]

タイトルと中身に若干の乖離がありますね。その点にちょっと引っ掛かりますが、内容は妥当と思えました。

今回は、思考停止と投機について


思考停止


元記事で同感する点を引用します。インデックス型の投資で感じた違和感の一つとして以下を挙げています。

最初に投資対象とする投資信託を決めたら、積立投資の設定をして、特に相場も見ないし、ニュースも見ていないということだ。


ほったらかしへの違和感ですね。

積立投資をセットしたら、あとは年に数回のリバランスだけで上手くいく。下手に相場を見ない方がいい、気にしない方がいいという話もあります。

それはそれで一つの達観ですね。


投資と投機


さて、ちょっと話題を変えて日経電子版に興味深い記事がありました。

「投資と投機どう違う? 投資は分析に基づき収益目指す」です。[外部記事]

投資と投機の定義も永遠のテーマですね。今回は日経の記事から定義を引用します。

米著名投資家、ウォーレン・バフェット氏が師とあおぎ「バリュー投資の父」として知られるベンジャミン・グレアム氏は著書「賢明なる投資家」で「投資とは詳細な分析に基づいて行うものであり、元本を保全して適切なリターンを上げることと定義する。この条件を満たさないものを投機と呼ぶ」と記しています。


この定義は議論を生じますね。

投資が「詳細な分析に基づいて行うもの」であるなら、ほったらかしを標榜する投資は投資と言えるの?

という点で。

あ、いや

もちろんこの定義に従う必要はないんですけどね。


思うこと


思考停止とは考えないということ。

一方で、リスク資産に投資する、投資し続ける、売却するという行為が、そのときどきで分析や判断といった「考えること」を要求するなら、思考停止している投資家は投資をしていると言えるのでしょうか。

こういう観点から考えてみるのもいいですね。

それはそれとして、そう言うお前はどうなんだ、と聞かれたら

んー

私は「詳細な分析」ではなく、ざっくりした分析に基づいて行っていますので、まあ、投機家ですね。

個人投機家。

意外に良い響きかも。

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分配型投信 シニア向け投信の記事に思うこと

シニア層を意識した定期分配型投信の記事が日経にありました。

年金支給のない奇数月に分配を行う「隔月分配型」の投信が相次いで登場しています。[外部記事]

なかなか興味深い内容です。

今回は、シニア層の投資について


記事の内容


鍵付きの記事なので引用は極力避けます。

バランスの取れた記事です。毎月分配型投信の「デメリット」と「顧客ニーズ」の両方を上手くまとめています。

デメリットは運用の複利効果が得られないこと。これは現役層にはマイナスですね。一方、顧客ニーズは毎月の分配を得られること。こちらは年金生活者などのシニア層のニーズです。

記事で取り上げていたのは分配の水準を抑えた隔月分配型の投信です。これはデメリットの低減と顧客ニーズの充足を考えた折衷案と言えそうです。


顧客ニーズ


記事には70代男性の「生活費のためなら投信の元本が多少目減りしても気にしない」との声がありました。

軽く注記しますと、「元本が多少目減りしても」というのは、「投資で損をして元本を棄損しても」という意味ではなく、「分配金の中に元本の取り崩しが多少あっても」という意味でとらえるのが文脈上は自然です。

さてそれはともかく、シニア層の投資を考えるとき、この言葉は興味深いです。

一人の声から全体を決めつけるのは危険ですが、

複利効果とか長期投資とか、雪だるま式の資産形成とか、そういう軸では投資を考えていないんでしょうね。運用しながら取り崩して生活費の足しにするので、そもそも複利効果は期待していないのでしょう。


思うこと


以前、毎月分配型ファンドについて記事を書きました。

理論の衣を着せた好き嫌い 山崎元氏の毎月分配投信の持論に思うこと

多くの拍手をいただきました。ありがとうございます。

毎月分配型(隔月分配型)の論点って多岐にわたりますね。

運用と取り崩しが一体化しているのがシニア層のニーズで、その受け皿が毎月分配型投信。お金を持っているのはシニア層なので結果として毎月分配が売れている(売れていた)。それが実態かと。

そういう実態に対して、課税のタイミングや複利効果で毎月分配にダメ出ししても噛み合わないでしょう。

私が年金生活になったとき、低コストのインデックスファンドで、年率5%~6%くらいの毎月分配(隔月分配)のファンドがあれば投資するかも。

そう思うと毎月分配型の形式も悪くないかなと。

毎月売却すればいいじゃん、という論点は置いておいて。(^^;

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山崎元氏の銀行批判に思うこと

山崎元氏の「銀行がダメなのは『金融緩和』のせいではない」という記事を読みました。[外部記事]

ダメと主張するのはいいのですが、ちょっと無理筋な言い分だなーと感じました。

銀行や公務員は批判の対象になりやすいですね。悪く言った方が読者受けがいいのでしょうが、場合によっては悪い感情だけが残ってしまいます。それって良くないですよね。

90年代バブル崩壊で金融機関に公的資金が投入されました。しかしそこに至るまでには悪感情を煽る議論が激しくて、公的資金の投入が遅れに遅れました。

現状の分析と打つべき手については、感情は抑えて考えたいです。


山崎氏の主張を疑え


山崎氏の主張を引用します。

たとえば銀行が、有望なビジネスを見つけて成長のための資金を貸したり、あるいは顧客に対してコンサルティング的な付加価値を持っていたりするなら、例えば短期金利にスプレッド(利鞘)を乗せて貸してもいいし、何らかの手数料を別途取るビジネスで儲けてもいいはずだ。

それが出来ていないということは、銀行の存在と彼らが提供するサービスに十分な価値がないということなのであって、金融政策に根本的な問題があるわけではない。銀行の「ビジネスモデルの行き詰まり」にこそ問題があって、低金利政策はそれを分かりやすく露呈させただけだ。


どうなんでしょう。

規制緩和の流れとはいえ、銀行は免許制でガチガチの規制業種です。銀行法の規定により他業を営むことは禁止されていて、銀行の業務範囲は①固有業務、②付随業務、③他業証券業、④法定他業に限定されています。

業務規制の基本的な理念は、本業である預貸業務に専念しなさいってことです。規制を緩和して銀行のできることを拡大したら、融資を見合いにいろんな要求を通すことができてしまう恐れがあります。(参照資料

山崎氏は「問題の本質は『銀行のビジネスモデルの行き詰まり』」と指摘しますが、銀行業の規制を考えたら「何らかの手数料を別途取るビジネスで儲けてもいいはずだ」なんて簡単には言えないはずです。


金融緩和の副作用


預金者が受け取る金利はゼロになり、銀行の利益は削られています。マクロ経済としては、家計(貯蓄超過の主体)から政府への所得移転です。

乱暴な表現では、預金金利が減らされた分、政府の国債の利払い負担が楽になっています。

銀行をバッシングするのもいいのですが、マイナス金利の実質的な効果として家計から政府への所得移転という面も指摘すべきでしょうね。家計がマイナス金利やゼロ金利を受忍するのは、それによって将来的に景気が良くなって所得が増える期待があるからなのに、そこはあまり上手くいっていない気がします。

アベノミクスには功罪あると思います。

デフレマインドの払拭にはある程度成功したものの成長戦略は道半ばでしょう。日銀による大規模な金融緩和の「副作用」を含めてアベノミクスを冷静に検証する時期が来ていると思います。


銀行の利益は削られている


データで銀行のビジネスモデルを考えたいと思います。データの出典は預金と貸金は日銀、国債は財務省です。

まず銀行の運用利回りについて。

貸出金利と国債の利回り。それと貸出7:国債投資3で運用したときの利回りを載せます。日銀のマイナス金利の導入は2016年1月です。そこにオレンジの縦線を入れました。

bank01.png

次に銀行の調達利回りと、運用利回りから調達利回りを引いた利ざやです。

調達金利は定期預金の金利にしました。

bank01.png

趨勢的に銀行の経営環境は厳しいですね。


思うこと


銀行の経営環境は悪化する一方です。できることも限られてます。

好き嫌いは別にして銀行は金融の社会インフラです。経営破綻したら影響は大きいので堅実経営が国民の利益にかないます。間違った方向にリスクを取ってしまうと、スルガ銀行のようになってしまいます。

行き過ぎた金融緩和の副作用の一端だと思うんですよね、スルガ銀行は。

そういう点も含めて、問題があるのは銀行のビジネスモデルだ、日銀の金融緩和政策のせいにするのはお門違いだという山崎元氏の主張には違和感を持ちます。


あと、一言


引用します。

仮に、本業も儲かるようになった場合(根本的にはありそうにないと思うが)、金融機関は、運用商品販売による手数料稼ぎの手を緩めるのだろうか?

別のビジネスが儲かるようになったからといって、今儲かっているビジネスの手を抜くというようなことがあるだろうか。それは、経営者も株主も許すまい。捕まらずに盗み続けることができると確信するなら、泥棒は、腹ぺこでなくても盗み続けるだろう。


んー

このたとえは言い過ぎですね。

こういう評論は誰のためにもならないと思います。

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