カテゴリ:投資や投機や貯蓄について の記事一覧

日経の金額加重収益率の解説に違和感

金額加重収益率とは?

日経にあった「投信の運用が効率的かを示す」という回答に違和感ありです。[外部記事]

今回は、金額加重収益率について


金額加重収益率


金額加重収益率の説明を企業年金連合会のサイトから引用します。[参照]

この収益率は、キャッシュ・フローも含めたファンド全体の収益率を測定するのに適している。しかし、金額加重収益率はキャッシュ・フローとそのタイミングの影響を排除できないため、計算効果が本来の運用能力とは違ったものとして計算されることがあるため、キャッシュ・フローの裁量権を持たないファンド・マネジャーの評価には適さない。


わかりにくいかもしれませんが、ポイントは最後の部分です。

本来の運用能力とは違ったものとして計算されることがある、という点です。

で、「ファンド・マネジャーの評価には適さない」とは、運用が上手くいっているのかを測るのに適さない、というのと同じようなことです。


単純化した例で


ちょっと面倒ですがおつきあいください。

単純化して考えます。

いま純資産総額100億円の投信があって、その基準価額は10,000円とします。

1年後、10%のリターンでした。その間、追加の流入も解約もありません。

100億円の純資産総額は110億円になっています。基準価額は11,000円です。

そこに110億円の追加資金が入ってきました。

純資産総額は220億円。基準価額は11,000円です。

さらに1年後、5%のリターンでした。その間、追加の流入も解約もありません。

220億円の純資産総額は231億円になっています。基準価額は11,550円です。


基準価額の動き


当初:10,000円
1年後:11,000円
2年後:11,550円

1 × 1.10 × 1.05 = 1.155

2年で15.5%ですね。

年平均では、1.155^(1/2)で、7.47%です。


純資産総額の動き


当初:100億円
1年後:220億円(追加110億円)
2年後:231億円

さて、この利回りです。

当初の100億円を2年間運用、1年後の追加110億円を1年間運用した結果、2年後には231億円になったと考えます。そのときの利回りを一定として求めると。

100×(1+r)^2 + 110×(1+r) = 231

これを満たすrを求めます。

答えは6.63%


金額加重収益率の6.63%


金額加重収益率の計算では、1年が終わったところでの追加の110億円の影響が大きいのです。

1年目は100億円で10%
2年目は220億円で5%のリターンですから、2年目のリターンの方が影響が大きくなります。

で、大事なことは

追加で入ってきた110億円は運用しているファンドマネージャーの裁量ではありませんし、最初の100億円の投資家とは全く別の投資家が資金を入れた可能性もあります。

運用の巧拙を測るのには適していないですし、追加投資を含めた資産の増加の効率性を測るにしても、自分の資金と他人の資金とか混在してしまいます。

つまり述べたいことは・・・

投資対象を考える際の判断基準の1つにはならない、ってことです。


おまけのひとこと


モーニングスターが公表しているインベスターリターンも同じです。

投信の運用の巧拙を測るのには適していませんし、ご自身の資産の増加の効率性を測るのにも参考になりません。

ファンドを選定する際の参考にはならないです。


さらにおまけのひとこと、でもちょっと大事


混乱するかもしれませんが、「ご自身の」資産運用が効率的かを測るには金額加重収益率は意味を持ちます。

ただし、その際は、ご自身が追加投資したり一部解約したなどの資金の動きをつぶさに把握する必要があります。その上で金額加重収益率(内部収益率、IRR)を自分で計算する必要があります。

投資のタイミングと金額が人によって違うのですから、金額加重収益率も一人一人違います。

ご自身にとって意味のある金額加重収益率は、自分で計算するしかありません。

え、私?

私は売った買ったの把握が面倒なので計算しません。(^^;

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積立NISA 金融庁と業界にすきま風に思うこと

積立NISAに関連して、金融庁と資産運用業界にすきま風が吹いているそうです。[外部記事]

すきま風ですか・・・

今回は、金融庁と業界について思うことです。


金融庁 vs 業界


金融庁と業界の対立はこうです。

当局は「顧客を最優先すべし」として、手数料が特別低い投資信託だけを「適格」とする異例の対応に出た。これに対し業界側は一定の利潤が出なければビジネスにならないと反発を強めている。


金融庁:顧客、ファースト
業界:いやぁ、それじゃ積立NISAはビジネスにならないっす

という感じですね。


社会的価値


金融庁長官は「手数料獲得が優先され、顧客の資産を増やせないビジネスを続ける社会的価値はあるのか」と問題を提起します。

社会的価値。

ただ、社会的価値って言葉は意外と厄介です。人によって広くとらえることのできる言葉なので、そこを起点に議論すると建設的な議論になりにくいのです。

なので、まずは別の論点、資本主義における企業の行動について考えます。


株主、ファースト


企業(株式会社)は何を最優先にすべきか。

答えは株主です。

ちょっと原理主義の考えですけど、原則としては株主ファーストです。

国の統治構造と企業の統治を考えます。

国家の主権は国民にあります。主権者である国民が選んだ議員が、国会で国民のために意志決定します。首相は国会で決められた法律や予算案に従って政治を行います。

企業にたとえると主権者は株主です。主権者である株主が選んだ取締役が、取締役会で株主のために意思決定します。社長や執行役は取締役会で決められた方針に従って会社を運営していきます。


忠実義務


ちょっと堅苦しいですけどもうちょっと続けます。

企業統治の点では株主と取締役の関係は、依頼人と代理人です。

株主:プリンシパル(主権者、本人、依頼人)
取締役:エージェント(代理人)

会社法 第355条
取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。

取締役(企業経営者)は、株式会社(≒株主)のために忠実義務を負っています。

なので、企業経営者としたら、株式会社ファースト、株主ファーストで、端的にいえば、利益ファーストですね。


そうは言うものの


企業経営者は、株主の利益を最優先させるのがあるべき姿です。

とはいえ、なんとかファーストを本気で貫くと、いろんなところで軋轢を生むのも事実です。国で言ったら自国最優先と国際協調とのバランスですし、企業なら利益最優先とステークホルダーとのバランスです。

上手くバランスを取るのが難しいですね。

トランプ大統領の政策も賛否は分かれ、フランスでは移民やEU残留について大統領選で大きく意見が割れました。自分(自国、自社)の利益をどこまで追及するか、他者との協調をどこまで行うか。

これは永遠のテーマの気がします。


思うこと


資本主義社会の原理原則では、株式会社は株主のために利益を追求します。そこに、顧客のために「社会的価値」という概念で金融庁は切り込んでいます。

株主のための利益と、顧客のための社会的価値。

折り合う部分もあれば折り合えない部分もありますね。

で、思うのですが

社会的価値は、最後は顧客が決めることなんでしょうね。

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日経の「テーマ型投信、どう付き合う?」に思うこと

テーマ型投信は評判悪いですね。

テーマ型、毎月分配型、多階建て投信は批判の対象になりやすいです。テーマ型で通貨選択型にしてカバードコールをつけて毎月分配にしたら、まず批判されるでしょうね。

理由はコストが高いとか、回転売買の材料にされるといったものです。投資信託が個人の長期的な資産形成に資することなく、金融機関の手数料稼ぎに使われる、というのが大方の理由でしょう。

今回は、個人の長期的な資産形成に資する投資信託についての雑感です。


テーマ型は長期投資に向かない?


日経ウェブに「テーマ型投信、どう付き合う?」という記事がありました。[外部記事]

検討したい点はいくつかあるのですが、今回は、テーマ型投信が長期投資に向かないという論調を取り上げます。日経は「金融庁はテーマ型投信のブームには警鐘を鳴らしている」としています。

金融庁が警鐘を鳴らす理由を整理すると、

1. テーマ型投信は中長期で保有し続けるよりは、旬を見極め短期間で売買益を確保することが重要なため、個人投資家には適さない。
2. テーマを追い掛け、投信を乗り換えさせる売り方に使われる。

となります。さて、どうでしょう。


論点整理


テーマ型投信の論点として、

1.テーマの持続性や優位性といったファンドの本質的な問題と、
2.金融機関の手数料稼ぎの道具になっている

という、次元の異なる問題をごっちゃに論じているので分かりにくいです。

で、論点を分かりやすくするために、1ファンドの問題と、2販売側のスタンスとを分けて考えましょう。


長期的な投資に向く投信とは?


まずファンドの問題です。

私が強い違和感を持つのは、長期的な投資に向く投信とは何かを定めないままに、テーマ型投信を販売側の視点で「短期売買に適する商品」としている点です。

長期的な投資に向く投信とはどういうものか。テーマ型投信はなぜ、投資する視点で長期的な投資に向かないと言えるのか。

その点の整理がないです。

次に販売側のスタンスを考えます。

現実的な姿として、販売側としては、インデックス投信の回転売買をすすめる販売員はいないでしょう。しかし、テーマ型は回転売買させやすいという現実はありますね。

その点に問題がありそうです。


テーマ型が長期投資に向かないというのは


どうやら、テーマ型が長期投資に向かないというのは、ファンドに内在する本質的な問題ではなく、

・販売会社が短期売買のツールとしているから
・投資家がそれに乗っているから

という点を反映させた論調に過ぎない気がします。

実際、テーマ型でも、日経で取り上げられた「グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド」は、長期的に保有していて報われたファンドです。

ファンドの問題ではなく、販売側と投資家のスタンスの問題として整理すべきですね。


思うこと1


テーマ型投信を金融庁が問題視しているとして、そのポイントは販売会社と投資家側にあるように思えます。ファンドの問題なのか、販売会社と投資家のスタンスの問題なのか、そこは分けて論じたいですね。

で、ファンドの問題を論じるなら、長期的な投資に向く投信とは何かを定めるところから始めるべきでしょう。


思うこと2


テーマ型投信をことさら擁護するわけではないのですが、

坊主憎けりゃ袈裟まで憎い
販売会社のスタンスが気に食わなければファンドも気に食わない

に陥ることなく、

坊主を憎んで袈裟を憎まず

で行きたいものです。(^^)

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運用コストは資産形成の一つの要素 唯一、最優先の要素ではなくて

投資の基本として、ドルコスト平均法の積立投資を長期的に、運用コストの低い投資信託で行うことが推奨されます。

積立投資、長期的、低コストです。

一般的な投資指南本はそうですし、金融庁が主導する積立NISAはまさにこの理念を具現化する制度です。

で、今回は低コストについて


基本的な考え方


低コストはいいことです。これが基本的な考え方です。

ただし、「コストが低いほうがいい」となると条件付きです。

(ほぼ)同じものであれば、コストが低いほうがいい。

です。

TOPIXをベンチマークとするインデックスファンドは、ほぼ同じものと考えていいでしょう。トラッキングエラーの大小の違いはあるにしても、どのファンドを選んでもポートフォリオの中身はほぼ同じです。

だから同じ指数にトラックするインデックスファンドならば、信託報酬が低いほうがいい。

ですね。


違うものなら


ところが、違うものなら、信託報酬が低いほうがいいとは言い切れなくなります。

バランス型ファンドでは組み入れる資産も違いますし、資産配分も異なります。それぞれのファンドではリスクリターン特性が異なります。

そのため運用コストは判断材料の一つにはなりますが、唯一、あるいは最優先の判断材料にはなりません。

具体的に見てみましょう。


信託報酬とリターンの関係


モーニングスターからデータを取りました。

小黒とら

過去5年(2002年3月末~2017年3月末)です。446ファンドあります。

横軸は実質の信託報酬料率、縦軸はトータルリターンです。どちらも年率。

トータルリターンは基準価額にもとづいていますので信託報酬控除後です。コストとトータルリターンには関係性が見られません。

信託報酬が低いほうがいいとは言い切れない結果です。


資産形成をするということ


実際のところ、資産運用というのは、資産クラスの中でアクティブにするかインデックスにするかという点よりも、どういうポートフォリオを作るかという点が大きいでしょう。

バランス型ファンドはポートフォリオの例です。たくさんのファンドを見ることで、リターンとリスク、コストの関係を見ることができます。

そこでコストとリターン関係ですが、先ほどの図のようにコストが低ければいいというものではないことが分かります。

あ、

大事なことなので念を押しますが、「コストが低ければいいというものではない」と言っているだけです。「コストが低いのがダメ」とも、「コストが高いのがいい」とも言っているわけではありません。

端的に言うと、コストが低ければいいという考えでは不十分。

という論点です。


リターンとリスク


先ほどの図ではコストとトータルリターンに関係性は見られませんでした。

小黒とら

こちらは関係性が見られます。

横軸は標準偏差(リスク)です。概ねハイリスク・ハイリターンの関係ですね。

資産運用で大切なのは、どのくらいのリスクを取ってどのくらいのリターンを狙うかの目算だと思うのです。


まとめ、のようなもの


今回は運用コストについて見てみました。運用コストは資産形成の一つの要素ですね。リターンを減じるので軽んじることはできません。

しかし、一つの要素であって、唯一の要素ではないですし、最優先すべき要素でもないと思います。

それは最初の図を見れば明らかです。運用コストとリターンには関連性は見られません。この結果から考えたいのは、コストが低ければ良いという考えで十分なのかという点です。

最近目にした記事では、手数料が○%以上のものは最初から投資の対象外にしましょうというのがあって、それはちょっと極論だなと思いました。

極論のほうが浸透しやすいですけどね。

人は自分で考えるより、他人から与えられる分かりやすい答えを受け入れたがります。論点や根拠を吟味しながら考えていくのは手間がかかるからです。

ただ、そうするしか自分の考えにはならないですよね。

手数料とリターン、リスク、資産形成をどう考えるか。

それは人それぞれ。自分の考えを持つことが大事だと思います。

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積立投資をしてよかったという回答に思うこと

日経電子版に積立NISAの記事がありました。[外部記事]

「積立NISAを先読み調査 収益重視ならリスク高め投信」という記事です。

今回は、積立投資について


積立NISAの記事


日経電子版にあった図を引用します。

日経電子版
画像出典

日経電子版の記事の趣旨は、ハイリスク型の投資とローリスク型の投資との比較です。

ただ、ちょっと気になったのは以下です。

 積立投資をした感想として回答者数824人のうち67.2%が「積立投資をしてよかった」と答え、「やらなければよかった」はわずか1.7%にとどまった。

 感想には「もっと早い時期から始めておけばよかった」「毎月継続することで、時間分散によって思っていたよりリスクは小さい」など、ポジティブな回答が多い。


さて、どうでしょう。


再検証


日経電子版の左図を再構築しました。

積立投資 小黒とら

縦と横のバランスが違うのですが、同じ図です。2007年3月末を10,000としています。(日経は100ですが)

10年くらい続けている人なら、いまのところだいぶ余裕のある含み益ですね。


投資時期を変えると


では、アベノミクス相場から投資を始めた人はどうでしょう。

3年前、2014年3月末から投資を始めたとしましょう。

積立投資 小黒とら

オレンジ色が3年前から積立投資をした人。
緑色は10年前から始めた人です。

株価下落に対する余裕度はだいぶ違いますね。


思こと


日経電子版にあった積立投資にポジティブな回答は、そのままでは受け取りにくいです。

回答者の中にはリーマンショックを耐え抜いた人が多く、ある意味では「サバイバーシップバイアス」があるかもしれないからです。

緑色の状況の人と、オレンジ色の人とでは積立投資の感じ方は違うでしょう。

それと、相場の状況も注意したいですね。

含み益の人はポジティブに評価するでしょう。含み損の人だらけのリーマンショックのときにアンケートを取ると回答はまた違ったものになるでしょうね。


思うこと2


積立投資は投資手法の一つです。

私はその手法が特に優れているとも、特に劣っているとも思っていません。

積立投資は買付時期を分散できるので購入単価を平準化しやすいのは特性の一つ。購入単価はゆっくりとしか変化しないので高値圏で始めると苦しむ時期が意外と長い、ってのも特性の一つです。

大事なのは、手法の特性を理解することですね。

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