釜山の慰安婦像に対する日本政府の対応 ゲーム理論で考えました

韓国で釜山に慰安婦像が設置されたことを受けて、日本政府は対抗措置を発表しました。
[外部リンク]

1. 在釜山総領事館職員による釜山市関連行事への参加見合せ
2. 長嶺駐韓国大使及び森本在釜山総領事の一時帰国
3. 日韓通貨スワップ取極の協議の中断
4. 日韓ハイレベル経済協議の延期

今回は、日本政府の対抗措置をゲーム理論で考えます。


極めて遺憾


抗議を表す外交上の用語は4つあり、それに強調語を付けるかつけないかの2通りあり、全部で8段階だそうです。(参考リンク

強い順に
1、2. (断固として)非難する
3、4. (極めて)遺憾だ
5、6. (深く)憂慮する
7、8. (強く)懸念する

今回の慰安婦像の設置について日本政府は「極めて遺憾」としています。8段階の上から3番目のレベルです。


なぜ遺憾なのか


2015年の日韓合意において、日韓両政府は慰安婦問題が「最終的で不可逆的に解決される」ことを確認しています。公式な文書になっていないにしても、日韓の両外務大臣が共同記者会見を開いて発表しています。

なので「最終的で不可逆的に解決される」ことの合意の存在は確実ですね。

で、日本としては、
1. 日韓合意を韓国側が履行していないことに対して遺憾
2. 領事機関の威厳等を侵害するウィーン条約に照らして遺憾
ということです。

日本の領事館に面した歩道に慰安婦像を設置することがウィーン条約に反しているわけで、韓国側がいかなる理由を述べようとも、設置を可とする理由はありません。

日本が撤去を求める正当な理由があります。


さて、ゲーム理論


1. 日本と韓国がお互いに協力し合うケース。
2. 日本が協力的で、韓国が非協力的なケース。
3. 日本が非協力的で、韓国が協力的なケース。
4. お互いに非協力的なケース。

この4つが考えられます。

囚人のジレンマと同じ利得構造で考えましょう。

japankorea.png

囚人のジレンマの詳細説明は省きますね。

囚人のジレンマのポイントは、「お互いに意思疎通のできない状況」での「一回だけの意思決定」という点です。その場合は、お互いに「非協力」が均衡となります。

協力し合えばお互いに高い利得が得られるのに、自分が協力し相手が裏切り(非協力)に出たときのダメージが大きいので、お互いに非協力を選ぶのです。だからジレンマなんですね。


外交ゲーム


さて、外交は「お互いに意思疎通のできない状況」でもなく、「一回だけの意思決定」でもありません。外交は、相手の取った行動が見えて、かつ、繰り返し行われる行為です。

そのときの戦略は単純な囚人のジレンマではありません。

ベストな戦略は、「しっぺ返し戦略」(Tit for tat)と言われています。

こちらの戦略として、最初は「協力」の行為を取ります。以降は相手の手を見て、その通りに返していくことを繰り返します。つまり、相手が協力なら、こちらの次の手も協力。相手が非協力なら、こちらの次の手も非協力です。


しっぺ返し戦略のポイント


こちらが先手の場合、初手は協力。
相手が協力で返してくれるなら、こちらも協力で返す。(こちらから裏切ることはしない)
相手が裏切るなら、こちらも非協力で対抗する。
相手が協力に戻るなら、こちらも協力に戻る。

というシンプルなルールです。

これが最も利得が高くなる戦略と言われています。

常に協力的でいるよりも、常に裏切るスキを狙っているよりも、相手に合わせた戦略を取るのがいいんですね。こちらから裏切ることはしないし、相手が協力に戻ったら、いつまでも裏切りを続けることなくスパッと協力する。

ただし、相手が非協力なら、こちらも相応の態度に出る。

いま日本は、「相手が非協力なら、こちらも相応の態度に出る」というスタンスなのかなと思います。


状況に応じて


相手が非協力でも、日本は融和的に・・・とか、相手が非協力的だからこそ、日本はもっと融和的に・・・という主張もあります。

たしかに北風と太陽では、最後には太陽が旅人のコートを脱がすことに成功します。

ただ、外交においては、非協力な相手にはそれ相応の態度に出る必要があると思います。孔子の論語、「或曰、以徳報怨、何如、子曰、何以報徳、以直報怨、以徳報徳。」に通じるものもあるでしょう。常に同じ態度ではなく、状況に応じて打つ手が変わるのは自然なことですね。

なにはともあれ、問題が解決して、お互いに「協力」に戻る日が早く来ることを願います。

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2907:

わかりやすくて、面白いです^^

しっぺがえし戦略が有効として成り立つのは、一個の連続しかつ統一した意思決定機構を有する組織間の場合ですよね^^。国家の場合はなかなかこのように簡単に行かないように感じます。特に日本の場合は難しい(国家の構成要素たる個人の利害関係が複雑に絡み時間とともに変化する、ひどい場合は積極的に内部から国を裏切ることもある)www

これまでは、戦後一貫して
2. 日本が協力的で、韓国が非協力的なケース。
が繰り返されましたね。
これまでは、私は個人的には半世紀近く
1. 日本と韓国がお互いに協力し合うケース。
を夢見てきた立場だったのですけど(学生運動とか、本田勝一あたりで学生時代過ごした人間ですから)。
私もアラ60となって、さすがにこのままでは不味いんじゃないかと思い始めてきています。

ただ、本来、相手国からの協力を得ることができないのであれば
最低でも
4. お互いに非協力的なケース
を選ばざるを得ないはずなのですが、
残念ながら、いまだにまともな歴史教育(外交問題を正誤や良悪から離れ客観的に学ぶ必要があります)や金融教育(金融リテラシーやゲーム律論には不可欠です)ができない日本(韓国も似たような状況なのかも)の状況では、
4. お互いに非協力的なケース
を選ぶことは、たぶん極めて困難なのでしょうね。

口当たりの良い耳触りの良いプロパガンダで時間が過ぎて、先送りとなり、そして同じことが繰り返されるのかもしれません。どこまで日本が耐えられるんだかわかりませし、経済的優位性がいつまで残っているんだかも怪しいですけど。タイムリミットは近いのかも。

長々と書いてしまって、申し訳ありません。

2017.01.08 19:48 いろいろでセカンドライフ #- URL[EDIT]
2908:

※2907:いろいろでセカンドライフさん
長いコメント大歓迎です。(^^)

私も1. 日本と韓国がお互いに協力し合うケースを夢見てました。現実的には2. 日本が協力的で、韓国が非協力的なケースが繰り返された結果、日韓の間に断絶ができてしまったと感じてます。
韓国の「恨の文化」が根っこにある以上、韓国が日本に対して協力的になるのは難しいのかもしれませんね。

2017.01.09 14:17 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]
2912:

私も1. 日本と韓国がお互いに協力し合うケースを夢見てきた人間の一人です。
しかし、ぶっちゃけ、
どうにもならないのかなあ?と思い始めたのが正直なところです。

同様に感じるのが、沖縄の基地問題ですね。

(私の目からすると)韓国の方々も沖縄の方々も、
合理的な判断ができなくなってしまっているような気がしてなりません。
大変残念なことですが。

2017.01.09 20:48 mushoku2006 #/EliecKQ URL[EDIT]
2914:

※2912:mushoku2006さん
韓国は近隣の国ですし、歴史的にも人の行き来が濃厚な国ですから、協力し合いたいですよね。

韓国も沖縄も、感情が理性を超えている人たちがいますね。一部の人だと思いますが残念です。

2017.01.09 20:58 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]
2917:

こんにちは

韓国の問題は合理的に考えればおかしなものですが、自分がおかしく思うのは関係ない立場にあるからで、もし南北分断の韓国にいたなら合理的判断は難しいでしょう。
合理的判断は場合によっては冷たいものです。
個人的には客観性と主体性の間ぐらいにいれたら良いと思います。沖縄も同じですね。・・・

2017.01.12 13:41 yazirobe777 #- URL[EDIT]
2920:

※2917:yazirobe777さん
そうですね。合理的判断は感情としては冷たい時がありますね。理と情のバランスは難しくて永遠のテーマだと思います。
情は理を超えて共有できるかどうか。理は情を超えて理解できるかどうか。なんだと思います。
韓国にしても沖縄にしても理と情のバランスですね。

2017.01.12 17:56 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]

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