分散投資の考え方(2) 現代ポートフォリオ理論

前回は分散投資のなかでも確率論にもとづく分散投資について書きました。個別ではリスクの大きなものでも、たくさん集めてプールすることで確率的な事象として扱えるという、保険の仕組みでの分散投資です。

今回はそれとは少し違って、現代ポートフォリオ理論にもとづく分散投資について書きます。

一般的な教科書や投資の常識では、分散投資が基本中の基本のように言われています。分散投資の狙いは、価格変動リスクを低減させてリスクとリターンのバランスをよくすることです。

現代ポートフォリオ理論(MPT:Modern portfolio theory)は、分散投資をきちんと数式で理論化しています。たしかに、リスク量(標準偏差)と銘柄間の相関係数から、理論的にリスクが低減されることは示されます。

よく、効率的フロンティアという曲線を示されて、分散することでリスクとリターンの関係が良くなります、と言われることもあります。


具体的に以下の事例でみてみます。


003_riskreturn.png

このデータで作れる効率的フロンティアは以下です。

効率的フロンティア

証券Aと証券Bと証券Cの、それぞれのリスクとリターンが上のようになっています。3つの証券に分散投資することで上の曲線のような効率的フロンティアが引けます。そうすると、それぞれ単独の証券では実現できなかった線上の領域にまでポジションを取ることができます。

効率的フロンティア

証券A、B、Cを組み合わせてポートフォリオを作ることで、ポートフォリオPのリスク、リターンが実現します。これがポートフォリオを組むことによるリスク低減効果であり、リスクとリターンの関係を向上させます。これが分散投資の狙いです。

その時のデータは以下になります。

分散投資

それぞれの証券よりも、ポートフォリオの方が、1リスクあたりのリターンが大きくなっていることがわかります。証券では0.625だった数値がポートフォリオでは0.791になっています。

なお、単純化のため各証券の1リスクあたりのリターンはすべて同じにしましたが、実際の世界では証券ごとに異なります。重要なのは、ポートフォリオにしたときにこの1リスクあたりのリターンの数値を大きくすることです。


ポートフォリオを組む利点


ポートフォリオの利点は、ポートフォリオとキャッシュの比率を調整することで、最適なリスクリターンを作れることです。

たとえば
(1) 証券Aに100万円投資
(2) ポートフォリオに56万8000円投資して残りはキャッシュ

(2) の方が、同じリターンを得るのに少ないリスクで済みます。



注意が必要なこと


分散投資はいいことばかりのように思えます。でも注意が必要です。

効率的フロンティアは、過去データ、あるいは仮定の数値にもとづいて作られます。つまり、「過去に分散しておけばリスクとリターンの関係が良くなっていた」と過去形で言うか、あるいは、「将来にリスクとリターンと相関が想定の通りであれば」、分散することでリスクとリターンの関係が良くなります、と条件付きで言えるのです。

重要なのは、過去には意味がなく、将来は予測が難しいということです。将来のリターンが予測しにくいように、将来のリスク量や相関関係も予想しにくいのです。

仮に、先程の例で、証券AでもBでもCでもいいのですが、ある証券のリターンがマイナスであったり、リスクが大きくなったりすると、効率的フロンティアの形状も変わります。リスクとリターンと相関の数値によっては、組み入れない方がいい証券も出てきます。

投資家が知っておくべきことは、投資する投資信託や株式銘柄数を増やしたとしても、それが必ずしもリスクとリターンの関係を改善することを意味しない、ということです。

どういうことか

マイナスのリターンを生むものに投資をするのは意味がありません。プラスのリターンを生むものに集中投資する方が、マイナスのリターンを生むものに分散投資をするよりもいいに決まっています。

また、リスクが大きくてリターンが小さいものにも投資すべきではありません。

リスクが小さくリターンが大きい投資信託や株式を厳選して、それでポートフォリオを組むべきです。理論的には「ポートフォリオの最適化問題」と呼ばれる分野です。

複数の銘柄に分散して投資するケースで、どの銘柄にどれだけの投資額を与えるべきか。それが最適化問題です。その最適化問題を解いていくと、銘柄によっては投資額がゼロになることがあります。

分散投資とは、リスクとリターンの関係を向上させるために行うのです。

(1) リスクとリターンの関係を向上させるために → 分散投資を行う。これは正しい。

(2) 分散投資を行えば → リスクとリターンの関係が向上する。これは間違い。

(1)が正しく、(2)が間違いです。
この違いをよく理解しておくと投資の判断に役立ちます。

 

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