ハイパーインフレ 来る?来ない?

前回はインフレでモノやサービスに対する需給の話でした。今回は大前研一さんや藤巻健史さんといった著名人がよく口にする「ハイパーインフレ」についてです。日銀の金融緩和についても後半で触れます。

前回の記事で村のパン屋さんのたとえを出しました。

村の経済が発展していくなかで、パン屋さんも設備投資や雇用の創出で事業規模を拡大していきました。

村の経済規模が大きくなって、村人は1,000人になっています。1人が1日に10個のパンを必要としています。村のパン屋さんは1件しかなく、そこでは1日に10,000個のパンが作れます。

村のパンの値段は1個100円でした。


ハイパーインフレ


あるとき、となり村と戦争が勃発してパン屋さんが空爆され、パン屋さんのかまどはほとんどが使えなくなってしまいました。生産量が激減です。1日に10,000個を作っていたのに、空爆後は1日に100個ほどを手作業で焼くのが精いっぱいです。

それにとなり村との戦争で負けてしまい、村が賠償金を負ったため村で使えるお金も激減しました。パン屋さんは設備を増やすこともできません。

パン屋さんの生産力は1日に100個です。供給力の壊滅による絶望的なモノ不足です。

需要があるのにモノがない。

パンが欲しければ高い値段を出してでも買うしかないです。みんなが欲しがるのですから。戦争前は1個100円だったパンがもう100円では買えません。

モノが圧倒的に不足している状況なら、どうせ手に入らないのですから、パン1個が1000円でも100万円でも、100兆円でもどうでもいいです。

戦争や大きな政変による国内経済の混乱などで圧倒的なモノ不足に陥ってしまい、貨幣経済が崩壊するのがハイパーインフレです。過去のドイツ、日本、ジンバブエの例をみると、ハイパーインフレが起きるのは紙幣の増刷が原因ではなく、モノを供給する力が壊れたのが原因です。

モノを供給する能力が壊滅したのでモノ不足に陥り、その結果として紙幣が役に立たなくなったということです。


日銀は能動的に紙幣を刷れない


紙幣を増刷するとハイパーインフレになるという説は、因果関係がちょっと違うでしょうと思いますね。

それと、「日銀による金融緩和」は「紙幣の増刷」とはイコールではありません。日銀は国債を買っていますが、それはほぼそのまま市中銀行との日銀当座預金残の増減で終わっています。ざっくりいうと、日銀が国債を買ってマネーを供給しても、それは市中銀行のところで留まっているということです。

マネーストック=市中銀行預金+現金(日銀券+貨幣)
マネタリーベース=日銀当座預金+日銀券

日銀がやっているのは「マネタリーベース」の拡大です。国債を買って「日銀当座預金+日銀券」を増やそうとしています。

日銀券は、市中銀行が日銀当座預金を引き出したときに発行されます。逆に、市中銀行が余った日銀券を日銀に戻すと日銀券は回収され当座預金が増えます。

日銀は、日銀券の発行と回収に関して受動的なのです。日銀券の発行を日銀が能動的に行えるものではありません。

マネーストックが増えるためには信用創造(≒融資の増加)による銀行預金の増加が必要ですが、企業がお金をそれほど借りないこともあって、日銀が金融緩和をしても思ったほどには市中にお金が流れていないのが現状です。

そういう状況で、「アベノミクス・黒田バズーカ → 紙幣の増刷 → 紙幣の信認低下 → ハイパーインフレ」というのは説得力に乏しいです。

結論:
ハイパーインフレにあおられないようにしましょう。

 

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