「積極運用でも低コスト」が気になったので コストとリターンの関係を検証

日経電子版はときどき気になる記事が載ります。

気になったのは「積極運用でも低コスト 投信『第3勢力』の実力」という記事です。
[外部記事]

今回は、投信のコストについて


日経記事


記事の一部を引用します。

“モーニングスターの調べ(表)では、「国内株式・大型ブレンド」に属する投信はアクティブ型全体では5年でも10年でも、「定説」通りにインデックス型に負けている。(略)

しかし低コストアクティブに限ると勝率が高くなり、10年では62%がインデックス型に勝っていた。(略)つまりアクティブ型がインデックス型に負けやすい大きな理由は、運用の腕というよりもコストの重さにあることが改めて認識できる。”


ここで勝ち負けを論じている基準は、モーニングスターのサクセスレートです。

で、私はモーニングスターのサクセスレートには問題があると考えています。理由は、過去記事:モーニングスターの「サクセスレート」ってどうですか? に書きました。詳細はそちらをご覧いただくとして、端的には

信頼性に欠けるというのが率直な評価です。

だから、この分析をもとにアクティブ運用の勝率とコストの関係を議論するのは、ちょっと強引じゃないかなーと思うのです。

ま、それはそれとして、低コストのアクティブ運用はそれ自身で注目したいですね。


さて、議論


さて、モーニングスターの分析結果はひとまず置いて、私なりに別の視点でコストとリターンの関係を検証します。

集計対象は、
・2016年3月29日時点で過去5年のリターンが取れるファンド
・追加型投資信託のみ、単位型は除く
・投資信託協会の分類で、国内株式・一般、国内株式・大型、国内株式・中小型
・ブルベア型とインデックス型とETFを除く、DCとSMAを含む
・データの出典はモーニングスター

これで427ファンドのデータが取れました。十分な数です。

で、関係があるかを見るには一般的には相関関係を見ます。

投信のコストとリターン 小黒とら

相関係数は0.125。それほど強い相関はありません。

ただ、興味深いのは係数がプラスだということです。この間はコストの高いファンドの方が、コスト控除後のリターンが高かったのです。

意外な結果ですよね。


別の分析


高コスト属と低コスト属で分けてみましょう。

全ファンド数が427本なので、上位213ファンドと下位213ファンドに分けます。平均リターンは以下でした。

高コスト属:10.06%
低コスト属:8.92%

投信のコストとリターン 小黒とら

さてさて、この2グループ間のリターン差は、1.14%あります。

このリターン差1.14%は、誤差の範囲内(=無視すべき差)なのか、それとも意味のある差なのか。

気になりますね。

で、統計のt検定をやったところ、P(T<=t) 両側が0.013なので、有意な差があると考えていいという結果です。(統計の説明は省きます)


つまり


427本の国内株式のアクティブファンドについて、過去5年のコスト控除後のリターンを分析した結果、

1. 高コスト属の方が、低コスト属よりもパフォーマンスが良かった。
2. しかも、グループの平均リターンには有意な差があった。


と言えます。

え-

って思いますよね。「定説」とは合わないですから。

どう考えたらいいんでしょう。


考え方


私の考え方は、

定説を鵜呑みにしなくてもいいんじゃない

ってことです。

コストとリターンは安定した関係ではないようです。ある時期に成り立つことが、別の時期には成り立たないこともあります。だから、

ひとつの結果から、普遍的に通用する結論を出すわけにはいかないですね。


コストが低いのが望ましいのは当然として


もちろん、コストは低い方がいいです。

他の条件が同じならば、同じポートフォリオの運用であるなら、コストの低い方を選ぶべきです。同じベンチマークにトラックするインデックスファンドならコストの低い方がいいです。

ただね、と。

内容の異なるファンドを比較するとき、低コストだからいいとか、高コストだからダメだとか、そういう決め打ちはできないだろうなーと思うのです。


余談


コストの問題なら、新ファンドをどんどん作っていくという業界の悪習に目を向けるべきなんでしょうね。

新ファンドを作って、目新しさで売るという販売姿勢が高コストを招いていると私は思っています。投信が5,000本もあれば固定的な管理コストも高くなるでしょうし、複雑な投信になればその分のコストもかかります。

だから投信のコストは下げられる余地は大きいと思うんです。

業界と投資家の両方のマインドが変われば、ですけど。

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1992:

いつも興味深いデータありがとうございます。
正の相関が得られたことは、販売者側の方が見たらうれしかったのではないでしょうか^^
5年後どうなっているかはわかりませんが。

そういえば、ファンドの短命化が叫ばれて久しいですね、現在7~8年程度とか。
この短命化は低コストファンドと、高コストファンドの成績にどのような影響を与えているんでしょうね。
あんまり高コストだと、長生きできないような気がします。

2016.04.01 07:00 いろいろでセカンドライフ #- URL[EDIT]
1993:

※1992:いろいろでセカンドライフさん
正の相関は、販売者側にはいい情報ですね。^^
5年後は逆の結果かもしれません。

ファンドの寿命とコストの関係は興味深いですね。おっしゃるように高コストだと生き残りに不利になりそうです。

2016.04.01 15:58 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]

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