分散投資の考え方(1) 確率論

前回は長期投資について書きました。今回は「分散投資」について書きます。

一般的な投資の教科書では「分散投資」をすすめています。

「すべての卵を1つの籠に盛るな(Don't put all your eggs in one basket.)」というのが有名な言葉です。また、現代ポートフォリオ理論を学んだ方は、分散投資によって個別リスクを分散消去できることを学んでいることでしょう。

この2つの分散投資は考え方の基本が違います。前者は確率論、後者はポートフォリオ理論です。

分散投資について重要なのは、投資先を分散させるのではなく、リスクを分散させることです。リスクを分散させることで損失の確率を安定させたり、リスクとリターンのバランスを改善させたりします。


分散投資のタイプ:確率論


分散投資には大きく分けて2つのタイプがあります。まず、最初の「すべての卵を1つの籠に盛るな」タイプの分散投資です。これは全滅を避けるためのリスク分散戦略です。

旅客機の機長と副操縦士が、機内で同じ食事をとらない
企業の会長と社長が出張するとき、同じ飛行機には乗らない
海外旅行に出かけるときは貴重品をいくつかのバッグに分けておく

そういうことと同じです。リスク分散です。一度にすべてを失うことが避けられます。

投資の世界でこの考え方が有効なのは、ハイイールド債券やバンクローンのようなクレジットリスクの高い債券に投資する場合です。

債券は、何事もなければ決められたクーポンと元本が返ってきます。悪くするとデフォルトで投資した資金が回収できなくなります。ですから、「いかに外れを引かないか」、それがクレジット債に投資するときの肝です。

分散投資の話題からはそれますが、株式はうまくすると急騰がありますので、「いかに当たりを引くか」、それがポイントです。債券では外れを避ける、株式では当たりを引く、それが銘柄選択のポイントです。


さて、債券に話を戻します。


クレジットリスクの高い債券に投資するときの、分散投資の考え方は「確率論」です。外れを引かないように個別銘柄の調査をしますが、それでもある程度の確率でデフォルトが出てしまいます。偶発的な理由で倒産する会社もありますから、どの発行体がデフォルトするかを予測するのはそう簡単ではありません。ですから、始めから、ある程度はデフォルトすることを見込んでポートフォリオを組みます。

その際のポイントは、ポートフォリオ全体のクレジットスプレッドが、実際のデフォルト率を上回ることです。分散されたポートフォリオであれば、デフォルトの発生確率はマクロ経済の動向によって変動します。個別企業の倒産は突発的に発生するかもしれませんが、ポートフォリオでは景気変動に沿った動きになります。

この考え方は、生命保険や火災保険のような保険ビジネスに通じる考え方です。どの家が火事になるのかはわからないので個別には対処しにくいのですが、たくさんを束ねて確率的な問題としてなら対処できるという考え方です。

クレジットリスクのある債券では、デフォルトの確率とそれに見合うスプレッドが取れているかでリスクを管理できます。

個人の方がクレジット債に投資するケースでは、特定の企業の社債を買うか、クレジット債のポートフォリオを運用する投資信託を買うかになると思います。個人で数百銘柄の債券投資は事実上困難ですから、リスク分散の観点からは投資信託が現実的な選択肢になると思います。

次回は、現代ポートフォリオによる分散投資について検討します。

 

管理者にだけ表示を許可する