長期投資はリスクを大きくします

長期投資はリスクを大きくします。これは本当のことです。

一般的な投資の教科書やマネー雑誌では、じっくりと構えて長期投資をした方がいいというのが普通です。投信をすすめる銀行や証券会社の販売員も独立したFPも、基本的には長期投資をすすめます。長期投資がいいというのは、ある意味で「投資の常識」になっています。

でも、「なぜ」長期投資がいいのでしょうか。

その点をじっくり考えてみましょう。私の持論は「長期投資と分散投資を疑え」というものです。疑って考えた後で、それでもやはり長期投資と分散投資がいいと判断するか、なるほど、そういう見方もあるかと思うかです。

今回は長期投資についてです。

専門家が長期投資がいいという理由を大きく分けると
(1) コスト
(2) リスク
の2つがポイントになると思います。この2点について検討していきましょう。


専門家が長期投資がいいという理由:コスト面


コスト面のメリットについては、1年当たりのコストを下げられるというものです。これは投資信託協会の説明がわかりやすいです。[参照サイト]

投資信託の申し込み手数料が高いので、その3%~3.5%の手数料を1年で償却するよりは10年で償却する方が1年あたりのコストが安くなる。そういうことです。

投資信託の申し込み手数料(販売手数料)は非常に高いので、その点では長期投資のメリットはあるでしょう。

でも販売手数料がゼロのノーロードの投信に投資したり、株式を買ったりすれば、そのメリットは関係ないです。


専門家が長期投資がいいという理由:リスク面


やはりメインは「リスク」ですね。

「長期投資によってリスク低減効果がある」というものです。長期投資によって1年あたりのリスクが減る、そのためリターンが安定するというものです。

以下の図が代表的です。日経平均の過去データからリスク低減効果を作成しました。

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横軸は投資期間です。1は1年間、10は10年間です。投資期間ごとの最大リターンと最小リターンを図示したものです。これをみると、長期間の投資の方が最大と最小の値が狭まり、リターンが安定するようにみえます。

ただし、これには注意が必要です。

注意すべき点は「1年あたりの」リスクが減るということです。1年あたりのリスクが減るのであって、リスクの絶対量は時間とともに増えます。1年あたりのリスクが減っても、リスクの総量は時間とともに増えることを説明します。


「1年あたりのリスク」が低くなることについて


まず、長期投資なら1年あたりのリスクが低くなって、リターンが安定することについてです。これは大数の法則で説明できます。

直感的には以下の図をご覧ください。

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短期間のリターン計測の概念図が薄い青(A)、長期リターンの計測の概念図が濃い青です(B)。それぞれ1か月ずらしてリターンを計測していき、そうやって得られたリターンのうち最小と最大を取り出します。なお(A)の図の5番目と6番目は、途中の推移を省略した概念図です。

このとき、最大値と最小値のブレが大きいのは短い期間で計測した(A)で、ブレが小さいのは長い期間で計測した(B)というのは直感的に理解できると思います。

少しのデータを集めるよりもたくさんのデータを集めたほうが、データの平均値が母集団の平均値に近づくからです。


リスクの総量は時間とともに増えることについて(過去事例)


さて、ここからは少し込み入った話になります。以下の図をご覧ください。最初に示した日経平均の分布図と同じデータで、最大値と最小値の分布を、年率換算しない騰落率で表したものです。(これだとリスクが増加しているようには見えないのですが、それはご勘弁ください。理論的な話を後で補足します。)

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これによると、長期でも勝つときと負ける時の差が大きいことがわかります。長期投資だからといって、出来上がりのリターンが安定するのではありません。

年率換算するとリスクが小さくなるので、リターンが安定するように見えますが、過去の日経平均のデータからは長期だから安心とは言えないことがわかります。


リスクの総量は時間とともに増えることについて(理論的な話)


理論的には、リスク(標準偏差)は時間(t)ととともに大きくなるのではなく、時間の平方根(√t)とともに大きくなります。

たとえばリスクが15%として、2年間では15%×√2、10年間では15%×√10です。
これを年あたりにすると、2年後は15%×√2÷2、10年後は15%×√10÷10です。

リスクが年率で15%の資産があるとすると、そのリスクは次のようになります。

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これをみると、1年あたりのリスクは小さくなるのですが、リスクの絶対量は大きくなるのがわかります。投資はリスクの積み重ねですから、長期間の方がリスクが大きくなるのです。

先ほどの図を使ってリターンの分布を試算します。簡略化のため期待収益率はゼロです。リスクのみを考慮します。

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上の図は10,000でスタートした投資資金が、2標準偏差でみてどうなるかを示したものです。損益の範囲が1年で3,000円、10年なら9,500円です。

10年で9,500円だから、1年あたりにすれば950円ですが・・・

だから長期投資が安定しているとはいえません。


ポイント


長期投資はリスクを増やします。投資は不確実なものですから、投資期間が長くなればなるほど、いいこともあれば悪いこともあります。ですから、やみくもに「長期投資だから大丈夫」とか、「長期投資がいい」と思うのは危険です。

今日は触れませんでしたが、リスクが小さくて期待収益率が高い資産なら、長期投資がいいケースがあります。ただし、そういう投資先を探すのは難しいです。

投資で成功するには、私は長期投資を過信しないことだと思っています。

追々書いていこうと思いますが、重要なのは、(1)リスクが小さくて期待収益率が高い投資先を見つけること、(2)投資を始めるタイミングと手仕舞うタイミングを大きく誤らないこと、です。

次は、「分散投資に関する誤解」について書こうと思います。

 

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