お金があるのに投資しない

お金があるのに投資しないのは、日本の企業のことです。

2015年の7-9月のGDPが2期連続でマイナスとなったことについて、甘利経済再生担当大臣は、課題は「企業の設備投資だ」としています。[外部記事]

今回は日本の企業行動について


バブル崩壊後の日本企業の姿


バブル処理のピークを1998年としましょう。

1997年に山一證券が自主廃業し、1998年には日債銀と長銀が破綻しました。これを機に日本のバブル処理はピークを迎えたと思います。

あれから20年近くですね。

バブル後の日本経済の特徴は、企業のデレバレッジ(債務圧縮)がず~っと続いていることです。

それを見ていきましょう。


企業は利益を積み上げている


法人企業統計の金融を除く全産業、全規模でみていきます。

まず、企業は利益を積み上げています。

法人企業統計 小黒とら

この図の赤線は、法人企業統計の「利益剰余金」の推移。いわゆる「内部留保」です。内部留保が300兆円というのはこの数字です。(正確には2015年4-6月で343兆円)

青線は、企業の借金の推移です。「金融機関借入金」の項目で流動負債と固定負債の合計額です。

これを見ると、企業は利益を積み上げる一方で、借金をどんどん返済してきたことが分かります。なお、内部留保は実際に現金が企業の「内部」に「留保」されているのではありません。現金で置いておくのではなく、借金の返済に使っています。

だから日銀がいくら金融を緩和(マネタリーベースを拡大)しても、企業が融資を返済しているのだから市中の通貨流通はそれほど増えないわけで、通貨流通量(マネーストック)が増えないとインフレも起きにくいんですね。

中央銀行がマネーを供給しても、インフレには一筋縄ではいかないところに日本経済の難しさがあります。

だから甘利経済産業大臣や麻生財務大臣が、企業に圧力をかけるわけですね。内部留保を減らしてもっとカネを借りろと。


企業の財布の中身


いま、企業のお財布の中にはキャッシュがたんまりあります。

法人企業統計 小黒とら

法人企業統計の「現金・預金」の数字です。

ここ数年、企業は業績が良好なので、手持ちのキャッシュも増えてます。いずれ借金返済に回るのかもしれませんが。

借金返済が進むと、企業の自己資本比率が高まります。他の条件が不変であれば、自己資本比率の向上は財務的な安全性を高めるものの、ROEは低下します。

政府がROEの向上を打ち出すのは、内部留保を減らしてもっとカネを借りろ(負債を増やせ)というメッセージでもあるでしょう。


設備投資


先日発表されたGDPでは企業の設備投資が足を引っ張りました。

で、設備投資の状況は下の図です。

法人企業統計 小黒とら

これは法人企業統計の「設備投資(当期末新設固定資産合計)」を加工したものです。設備が1年で10%減価する(四半期で2.5%)として、フローの数字をストック化したものです。これで正しく表しているかは議論の余地ありですが、大まかな傾向はつかめると思います。

1995年以降の伸びが頭打ちです。


日本のGDPを増やすには


日本のGDPを増やすには

1. 企業が負債を増やすことでマネーサプライが増えて、インフレ気味になる。
2. 企業が設備投資を増やして、GDPを直接押し上げる。

という感じでしょうか。

いまの企業は大企業を中心に「お金があるのに投資しない」傾向があります。

一方で、ベンチャー企業は「アイデアがあって投資や事業拡大をしたいのに、お金がない」という話も聞きます。

個人では老人と若者の間でお金の需給のアンバランスがあり、企業では老舗企業と新興企業で同様のことがありそうです。

お金を持っている主体はリスクを取りたくない。

リスクを取りたい主体はお金がない。

世の中、うまくいかないもんですね。(^^;

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1322:

こんにちは

国が企業に設備投資しなさいというのは高齢者に投資しなさいに似ている気がします。下手すると反発されるかも・・・
投資しないと損と思わせる環境を構築しないと無理でしょうね。
でも、高齢者と企業は投資はなかなかしないものです。手元にキャッシュがない怖さを肌で分かっているでしょうから・・・

2015.11.18 16:39 yazirobe777 #- URL[EDIT]
1323:

※1322:yazirobe777さん
下手すると反発されるかもしれませんね。
ただ、企業は本来はリスクを取る主体ですから、もう少しリスクを取ってもいいのではと思います。成熟企業がリスクを取りにくいのであれば、新規に起業する人たちにリスクマネーがもっと供給されるといいのかもしれませんね。
手元にキャッシュがない怖さは、そうですね。なかなか難しいですね。

2015.11.18 22:28 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]
1326:

お世話になっております。

企業が設備投資しないのは国が財政出動を絞り、緊縮財政を取っているからでしょう。
国が緊縮財政を取って、消費を滞らせるので、お金が回らずデフレとなります。デフレで実質金利が高いのですね。だから投資できません。

1994年の橋下総理以後はずっと緊縮財政だったからこそ、企業も設備投資ができなかったと推定しています。

2015.11.19 20:47 ニシ #- URL[EDIT]
1328:

国内には投資してなくても、海外には投資してないのですかね。
製造業が海外のどんどん工場を移していたので。
日本は人件費も高いし、それでいて人口減少傾向の内需成長性のない国だから投資してもしょうがないかと。

2015.11.19 22:16 招き猫の右手 #- URL[EDIT]
1332:

※1326:ニシさん
財政と金融のポリシーミックスでは、財政は緊縮気味で金融は超緩和ということだと思います。財政の健全化を考えると国はあまりバランスシートを拡大できず、その分、中央銀行のバランスシートが拡大しているということかと。
個人消費の低迷は、国の財政の問題とも言えますし、企業の労働分配率の問題でもあると言えますね。問題は複雑に絡み合っているのですが、企業が慎重な姿勢を崩していないという面はあると思います。

2015.11.19 23:12 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]
1333:

※1328:招き猫の右手さん
企業は海外では投資をしていますね。
国内の投資は頭打ちです。マクロ経済的にはしょうがない部分ですが、それでも企業は慎重すぎる気がします。

2015.11.19 23:14 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]

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