GPIFのリスクは過大か 個人と国家のリスク許容度について

GPIFの現状について、リスクを取りすぎていて不適切だと考える人が多いようです。

GPIFのポートフォリオのうち、50%が株式(国内株式と外国株式の合計)だということに加え、為替リスクのある外国債券を15%も保有することで、全体としてリスクが過大だという批判です。[外部記事]

今回はリスクの負担について


GPIF:世界最大の機関投資家


GPIFは世界最大の機関投資家です。

2015年6月末時点の運用資産額は141兆1,209億円もあります。

方や個人投資家。

個人投資家で1億円あれば十分に裕福ですよね。

で、GPIFの141兆円は、1億円の個人投資家141万人分です。

141万人といえば、山口県の総人口(142万人、2013年総務省統計)に匹敵します。

個人投資家の投資額が1億円じゃなくて1,000万円だとしたら、1,410万人分です。そうすると東京都の人口を超えます。

いかにGPIFの運用額が巨大なのかが分かりますね。


個人投資家のリスク許容度


GPIFの運用に話を進める前に、個人投資家の事を考えましょう。

個人投資家で裕福な人って、傾向としてはある程度年配の人です。そういう人って、人的資産という点ではリスク許容度は小さいはずです。

端的に言ってしまえば、日本で金融資産を持っている人は60歳以上の高齢者で、そういう人はあまり株式のリスクは取れないってことです。

お金を持っている人は、リスクを取りにくい年齢層に固まっている。これは大事なポイントです。

だから日本の家計の金融資産は預貯金のウェイトが大きいわけですね。日本人のマインドとしてリスクを取るのを避けるというのもありますが、もともとあまりリスクを取るべきでない層にお金が偏在しているという面もあります。

で、繰り返しですが、お金はあるけれどリスク許容度は低い。

これが日本の個人投資家の全体像です。


GPIFのリスク許容度


世界最大の運用額を誇るGPIFのリスク許容度はどうでしょう。

GPIFは独立行政法人ですけど、実態としては国が運営する機関投資家です。要は、国家がバックに付いているってこと。

GPIFの存在は、国とほぼ同じとみなしていいでしょう。年金という国の社会保障制度の土台を担うのですから、GPIFは永遠につぶれない存在と考えていいです。

だとすると、GPIFのリスク許容度は、国のリスク許容度と同じです。最強です。

個人では取りきれないリスクでも、国民の集団として取ることができるのが国家です。金融資産の運用リスクに対しても、個人よりはGPIFの方がリスク許容度が高いのです。

GPIFのリスク許容度は高い。


理論的に考えると


リスク資産をどれだけ持つことができるかは、リスク許容度の高低で決まると考えるのが理論的です。

リスク許容度の低い個人はリスク資産を少なめに保有すべきで、リスク許容度の高いGPIFは、リスク資産を多めに保有することができます。そう考えるのが投資理論的には正しい考え方です。

さらに、世界的な経済成長を背景に長期投資をするのがいいという考えに立っても、個人よりはGPIFがリスク資産を多く持つことが合理的と言えます。

なぜなら、個人はいつかは亡くなります。投資期間は長くても50年でしょう。しかし、GPIFはゴーイングコンサーンですから、超超長期投資が可能です。

もっというと、投資の専門的な知識や調査分析にかけられる時間も、個人よりはGPIFの方が上でしょう。個人では投資がよく分からないという理由で投資を行っていない層もそれなりにいます。

そう考えるとリスク許容度の点でも、専門知識の点でも、投資に踏み切れない個人に対する福利厚生の点でも、GPIF(国家)が個人より大きなリスクを取ることは是認されるべきです。


まとめ、のようなもの


GPIFは日本で最もリスクの取れる主体です。

理論的な帰結としては、GPIF(国家)は個人より大きなリスクを取れるという、ある意味ではあまり面白くないところに落ち着きます。

一方、老後に備えた年金運用のリスクはGPIFじゃなくて個人が負うべきという考えは、

いやー、国民の皆さん、GPIFはリスクを取らないから、みんな自助努力で勝手にやってね。老後になんとかショックにぶち当たったらご愁傷様です。

というのに近いんじゃないかなーと思ったりします。

個人が老後に入るタイミングと、なんとかショックが起きるときのタイミングのリンクを緩和するのもGPIFの機能だと思うんですよね。

年金の運用について、個人がどのくらいのリスクを負担して、GPIF(国家)がどのくらいのリスクを負担すればいいのか。

議論は尽きないテーマですね。

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1286:マチュアな基金のリスク許容度

明快な解説ありがとうございます。
一点、疑問に感じるのは、GPIFが年金基金としてmatureしつつあり、そう遠くない将来に給付が拠出を上回るようになるため、やはりリスク許容度はその分下がるんじゃないのかということです。
市場のリターンが長期的には同一の平均年率でも、ボラティリティが高いパターンだと、matureな年金基金の場合は大幅な下落で生じたdrawdownをその後のV字回復で取り戻しにくくなります。「若い」基金のように市場が下がったところでの拠出金の純流入がないためです。
現在のキャッシュフローはまだその段階に行ってないとしても、GPIFの規模だとそうなった時にいきなり戦略資産配分を大幅に変えるわけにもいかないでしょうから、ある程度保守的にならざるを得ないんじゃないのかと思うのですが、いかがでしょうか。

まあ、もちろん政府は拠出金の引き上げとか、給付率の引き下げ、給付開始年齢の引き上げなどでdrawdownをなるべく遅らせようとするとは思いますが。

2015.11.12 13:08 エイハブ船長 #rp62qxeU URL[EDIT]
1287:小説(白鯨)のように生き残るるのは1人ならいやですね・・・

こんばんは
GPIFの資産配分については何とも言えませんが年金が維持不能と思われるなか異常な低金利の国債を主だったのも変な感じです。これから若者は運用で自分年金を作る必要にせまられるので、リスク型の運用もありと思います。
(日本も法人税の下げや労働法制を変えつつあるので能力のある企業は収益を上げやすい環境になりつつありますので・・・)

これからは高配当株とか増やして
「国家147兆円配当金ぐらし・・・わたしたち生きています!」を目指してもいいかも知れません。
(某アニメより笑)
でも147兆の3%そしてたぶん無税!凄いなあ・・・

2015.11.12 19:16 yazirobe777 #- URL[EDIT]
1288:

※1286:エイハブ船長さん
こちらこそありがとうございます。ポイントをついたコメントをいただきました。
GPIFの成熟度は以下の資料にあります。
http://www.gpif.go.jp/topics/2014/pdf/1031_midterm_plan_henkou.pdf
これを読むと、25年の想定である程度のリスクが取れる状況とみられます。おそらく5年後ごとに見直しをしつつ、ある程度のところからは徐々にリスクを落とすのかもしれませんね。
基金の成熟度も本来なら言及すべき項目でしたね。

2015.11.12 20:38 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]
1289:

※1287:yazirobe777さん
そうです。GPIFの主要資産が日本国債でいいのか、という議論も必要ですね。リスク許容度が高いのだから、ご指摘のように配当で食っていきますというのもありですよね。無税ですし。
この先、会社に縛られ過ぎない働き方ができるような労働法制になって欲しいですね。

2015.11.12 20:44 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]
2334:GPIF

古い記事へのコメントですみません。
GPIFの成熟度の問題、やっぱり表面化してきたようです。
↓の記事、タイトルがセンセーショナルなのがナンですが、本質的な指摘は正しいと思います。

http://toyokeizai.net/articles/-/125741

この記事によると、収入と給付のバランスはすでに流出超になっているとのことなのですが、だとすると今後はいっそうトリッキーになりますね。

実際には、規律正しく基本ポートフォリオを維持していれば、資産配分のリバランスで一定の押し目買い効果はあるんだろうと思いますが(国債はバブってるし!)。

2016.07.05 09:39 エイハブ船長 #- URL[EDIT]
2340:

※2334:エイハブ船長さん
いえいえ、古い記事のコメントも大歓迎です。古い記事に再び光が当たるのはうれしいです。

そうですね。タイトルは刺激的ですが内容は妥当だと思います。GPIFについては基金の成熟度は増していきますが、一方でリスク許容度が大きい主体であることは変わりなく、どのくらいのリスクを取るかは永遠のテーマになりそうですね。債券は期待リターンが低下する中でそれなりのリスクはありそうですし。

2016.07.05 22:13 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]

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