敗者のゲーム なぜベストの10日を除くのか

本棚の片隅にあった「敗者のゲーム」を読み直しました。

「『稲妻が輝く瞬間』に市場に居合わせなければならない」という表現で有名な本です。

今回は「敗者のゲーム」で書かれていたタイミング効果について


敗者のゲーム


敗者のゲームはロングセラーの本ですが、私の持っているのは2000年5月の1版5刷のバージョンです。

41ページ目には、以下のようにあります。なお、引用文にある図3-1は、このブログには非掲載です。(図がなくても意味が取れますので)

図3-1は、タイミングを間違って売ってしまいベストの上昇日を逃した時の、株式の複利利回りに与える影響を示している。ベストの上昇日10日を逃すだけで - 検証期間のわずか0.5%にも満たないが - 、平均収益率はその三分の一を失い、18%から12%へと低下する。


さて、これをどう解釈したらいいでしょう。

第一印象では、ベストの時を逃すと痛いから、常に市場にいた方がいいと思えます。

しかし、そう考えるのはちょっと待ってください。

少し数字の多い話になりますが、ちょっと我慢して私の考えを読んでください。


2000日のうちの10日をどう考えるか


検証期間は1982年から1990年の8年間です。日次ベースで考えると1年を250営業日として、2,000営業日です。

そのうちの10日間といえば、ちょうと0.5%ですね。本には「わずか0.5%にも満たない」とありましたが、整合的です。2,000営業日のうち10日、0.5%で話を進めましょう。

さて、0.5%の出来事をどう考えるか。

株価の日次リターンを対数収益率(=連続複利のリターン)で考えます。
対数収益率は正規分布すると考えます。

そうすると、0.5%の出来事は、2.58σの出来事といえます。実際には2.58σよりも遠い事象も起こり得るのですが、簡略化のため2.58σで統一します。

2.58σのリターンが、2000営業日のうち10営業日発生した。

ここまで、いいでしょうか。


2,58σをどう考えるか


2,58σのリターンのことを考えましょう。

敗者のゲームでは、S&P500の年率リターンは18%でした。そのうちベストの10日を除くと、年率12%になったというものです。

さて、S&P500の年率リターンは18%。
そのときのボラティリティ(リスク、標準偏差)を年率30%と仮定します。ま、妥当な数字でしょう。

そうすると、250営業日を前提にすると
日率のリターンは0.07%、リスクは1.90%となります。

ここまでの数字で、2,58σのリターンを計算します。


2,58σのリターン


2.58σのリターンは次のように計算できます。

R_(2.58σ) = 0.07% + 2.58×1.90%
R_(2.58σ) = 4.96%

ということで、4.96%です。

4.96%のリターンが10営業日あった、と考えます。

さて、ここからもうちょっと考えてみましょう。


いよいよ本題


4.96%のリターンが10営業日ですから、その寄与は49.6%分あったということです。観測期間の全期間、2,000営業日における寄与です。

一方で、S&P500の年率リターンは18%でした。これが8年(2,000営業日)ですから、全期間の累積リターンは144%ということです。

さて、全体は8年間で144%です。そこから10営業日の49.6%を取り除いたらどうなるでしょう。

144% - 49.6% = 94.4%です。

年率なら、94.4% ÷ 8 = 11.8%

「敗者のゲーム」ではS&P500の年率リターンは18%でした。そのうちベストの10日を除くと、年率12%になったということですから、整合的ですね。


さて、どう解釈するべきか


長々と書いてきましたが、数値データ的には、0.5%の確率で起きる大きなリターン"だけ"を取り除いたら、それがたった0.5%でも、影響度は大きいということです。

で、考えるべきは、そういうめったに起きない大きなリターン"だけ"を取り除いたリターンの再構成にどれだけの意味があるのか、ということです。

2000営業日の、たまたまその10営業日だけ、投資していなかった・・・

そんな状況は起こりにくいでしょう。


まとめ、のようなもの


敗者のゲームは定番の本なので、一度は読むことをお勧めします。でも、まあ、2000営業日の、たまたまその10営業日だけ、投資していなかったらどうなるかという試算はミスリードじゃないかなーと思ってます。

ちなみに、逆に、ネガティブな2.58σの10営業日だけを取り除くと、年率換算のリターンは18%から24%に跳ね上がります。

どちらの試算も現実味がない試算ですよね。

ま、ともかく、「相場が大きく上昇する時に相場にいること」だけを強調するのは偏っていて、「相場が大きく下落する時に相場から離れていること」という視点も重要じゃないでしょうかね。

投資の目的が「市場平均に勝つことや、市場平均についていくこと」なら、常に市場にいることはいいと思います。

でも、投資の目的が「プラスの成果を得ること」なら、相場から離れる選択肢も持っていたいですね。

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484:

エリスの本は強力な暗示効果?があるので要注意です。
(^^
あれを読むとアクティブ運用やトレードをする意欲が無くなりますね。

2015.06.14 19:32 Tansney Gohn #SNAM66t2 URL[EDIT]
485:

>ベストの上昇日10日を逃すだけで

常々、ワーストな10日を除けばどうなるんだろうと思っていましたが、やはりリターンは跳ね上がるようですね。

安定的に稼ぎたいと思っているので、私からはベストもワーストも除外してくれないものかな、と思います。

2015.06.14 21:32 AKI #- URL[EDIT]
486:

※484:Tansney Gohnさん
そうですね。強力な暗示効果がありますね。話の持って行き方がうまいです。

2015.06.15 09:51 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]
487:

※485:AKIさん
ベストでもワーストでも、極端に大きな値を除くと見え方は大きく変わってしまいますね。そうですね、ベストな10営業日もワーストな10営業日もいらないから、安定的に稼ぎたいですね。

2015.06.15 09:55 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]
488:

「『稲妻が輝く瞬間』に市場に居合わせなければならない」ということで有名な本だったのですね^^
私は、以前この本を読んで、大事そうなとこ書きだしたんだけど、「タイミングを間違って売ってしまいベストの上昇日を逃した時の」云々、という部分は書きだしていませんでした。
肝の部分なんだろうけど、そんなに確率の低いタイミングの時を意識して相場に参加してなんていられないと思ったのかどうなのか。
市場が拡大成長するという幻想に投資しているものだから、時々インデックス(ETF)を適当に買って、後は持ったままという感じになりつつあるので。
その10日だけを外す(あるいは10日だけを含める)のが現実的にはほぼ不可能です。
年率換算値を250の平方根で割ってリスクの日割り計算、いつもながら勉強になります。

2015.06.15 16:20 いろいろでセカンドライフ #- URL[EDIT]
489:

株、どヘタです。

底値の時に持っていないようにするのも、とても難しい気がします。

下がっても、もっと下がるのか、いつごろまで下がるのか、いくらくらいまで下がるのか、皆目見当がつきません。

今回にしても、安倍政権誕生まで下がり続けたわけですが、これもわかりませんでした。

また安倍政権になってから、ここまで上げが持続するのもわかりませんでした。
あああああ、むずかしい!!! さっぱりわからない!!!

2015.06.15 16:47 通りすがり #- URL[EDIT]
490:

こんばんは
家のは2007年 8刷りです。
しおりに外れ馬券を使う変な癖があって、この本のしおりは
2008年京都のMCSです。(笑)
本を読んで某外資系銀行(もうすぐ撤退予定の)でインデックファンドを買おうと思ったら商品がないといわれたのがが思い出です?
多くの人に影響を与えて名著で、インデックス投信を買ったキッカケにもなりました。現在は書籍の費用の○○○倍の利益を得ているので、永久保存書籍です。しかし、すべてインデックス投資が万能とは思えませんし、盲信はしないように心がけています。

2015.06.15 22:05 yazirobe777 #- URL[EDIT]
493:

※488:いろいろでセカンドライフさん
タイミングを間違って売ってしまい・・・は、肝と感じない人もいる箇所だと思います。確率の低いタイミングの時を意識してもしょうがないですからね。
私も、実は肝に感じない派です。(^^;)

年率換算値を250の平方根で割って・・・は、私が本文で説明を端折った部分にフォローを入れていただいて、ありがとうございます。(なんでリスクは1.90%なの?と思った人もいるでしょうね)

2015.06.16 14:46 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]
494:

※489:通りすがりさん
コメントありがとうございます。
あまり難しく意識するより、皮膚感覚で景気を感じればいいんじゃないでしょうかね。

2015.06.16 14:50 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]
495:

※490:yazirobe777さん
ロングセラーで多くの人に影響を与えた本ですよね。影響度合いは人によるのかもしれませんが、投資をしている人の多くで共通の話題にはできますね。

2015.06.16 14:55 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]

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