「運用成果の大部分はアセットアロケーションで決まる」を再考する 2

前回の続きです。[前回記事]

運用の9割は資産配分計画で決まる。だからアセットアロケーションが大事。

この常識を一歩踏み込んで考え直してみましょう。


年金基金の運用方法


アセットアロケーションの研究は、年金基金が対象となることが多いです。有名なBrinsonらの研究でも、分析対象は年金基金のポートフォリオでした 。

年金の運用では、運用者側はパフォーマンスが悪いと年金基金から解約されますので、解約を恐れて銘柄選択でもタイミングでも大きなリスクを取りません。資産配分を管理する年金基金にしても、実際の資産配分を計画のウェイトからあまりズレないように管理します。

なので、実際のポートフォリオは、計画ポートフォリオからあまりズレないのです。

実際のポートフォリオは計画ポートフォリオからあまりズレないのだから、実際のポートフォリオのリターンが、計画ポートフォリオのリターンで9割方説明できるのは自然なことです。

銘柄選択でもタイミングでも、資産配分のタクティカルな変更でも、取っているリスクが小さいのだから、それらの効果が小さく出るのは自然なことです。


ちょっとした例


アセットアロケーションの議論のポイントは、私は次の2点だと思います。

①計画ポートフォリオで9割方説明できるケースでも、実際のパフォーマンスは大きく違うことがある。
→ 9割方説明できることを考え直す検討材料です。

②実際のパフォーマンスは似通っていても、説明力が大きく低下することがある。
→ アセットアロケーションで9割決まることへの検討材料です。


料理のレシピ


料理のレシピとして次の4つのファンドを用意します。過去10年の月次リターンです。分配のないファンドを分析対象にしました。

国内債券・アクティブファンド(シュローダー年金運用ファンド日本債)
国内債券・インデックスファンド(野村国内債券インデックスファンド)
国内株式・アクティブファンド(フィデリティ・日本成長株・ファンド)
国内株式・インデックスファンド(三菱UFJDCトピックスオープン)

このうち、国内債券インデックス50%と、国内株式インデックス50%で、「基本ポートフォリオ」を作ります。


残りの1割の効果


基本計画から実際の配分を意図的に乖離するのは、タクティカルなアセットアロケーション(TAA)と呼ばれる戦略です。TAA戦略を取った場合で、うまくいった場合を考えてみます。

「TAAポートフォリオ」の資産配分は以下です。アクティブファンドです。

2005年5月から2006年12月まで、株式60%、債券40%
2007年1月から2011年12月まで、株式40%、債券60%
2012年1月から2015年5月まで。株式60%、債券40%

このとき、TAAポートフォリオのリターンを被説明変数、計画ポートフォリオのリターンを説明変数として回帰分析すると、説明力は92.7%です。

アセットアロケーション 小黒とら

基本ポートフォリオとTAAポートフォリオでは結果はだいぶ違いますね。

TAAポートフォリオの説明力は92.7%でした。説明しきれない7.3%の部分で、出来上がりにこれだけの違いが出てくるのです。

資産配分をタクティカルに変更することの効果は、あると言えるでしょう。

配分を決めたら、それを守り通すことがベストな戦略とは限らないです。


リスクを大きく取れば説明力は低下する


リスクを大きく取った状況を考えます。資産配分を毎月ランダムに変化させた「ランダムポートフォリオ」を作ります。

先にグラフを見ましょう。

アセットアロケーション 小黒とら

基本ポートフォリオとほぼ同じ動きのようにみえます。

では、「ランダムポートフォリオ」のリターンは、基本ポートフォリオのリターンでどのくらい説明できるでしょう。

その答え、説明力は76.7%でした。

出来上がりは似た動きをしているのに、月次で配分を変えていることで基本ポートフォリオによる説明力が大きく低下したのです。

これから言えることは、基本計画から乖離するリスクを取っていれば、説明力は低下するということです。

逆の方向から考えると、アセットアロケーションの説明力が高いのは、計画ポートフォリオから乖離するリスクを取ってないからでしょ。ということです。


お伝えしたいこと


今回はかなり複雑な内容を詰め込みすぎたかもしれません。

TAAポートフォリオでは、説明しきれない7%の部分で出来上がりが大きく変わること。
ランダムポートフォリオでは、乖離のリスクを取ればアセットアロケーションの効果も低くなること。
を示しました。

どちらの結果も、これまで言われてきたアセットアロケーションが9割を決めるという意味を見直すきっかけになるでしょう。

アセットアロケーションを考えてポートフォリオを組むのもいいのですが、資産配分を守ることを重たく考えなくていいでしょうね。


まとめ、のようなもの


これまで広く言われているアセットアロケーションの重要性は

1. 計画ポートフォリオとあまり違わない実ポートフォリオの運用成果を分析して
2. 運用成果は、計画でほとんど決まる
3. だから計画が大事だ

と言っているようなものです。

私はアセットアロケーションの計画を立てる事を否定も批判もしませんが

個人投資家は、極論すればアセットアロケーションに囚われなくていい。

と思います。

実際のところ、私はアセットアロケーションを決めてません。 (^^;)

説明不足かもしれませんが、長くなったのでいったんこのへんで。

関連記事:約9割は投資配分比率で決まる だからファンドラップ え?

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424:

中期で考えると、今はファンダを読みやすい時期ですね。
マネーの流れる方向の少し後をゆったりとついて行けばパフォーマンスが上がると思います。

GPIFは以前は幅を持たせたゆるいSAAでしたが、最近アセアロを大幅に変更していますからもうSAAとは呼ばない方が良さそうですね。

2015.06.07 09:09 Tansney Gohn #SNAM66t2 URL[EDIT]
425:

下の毎月ランダムの基本ポートフォリオなるものが上のグラフの基本ポートフォリオの線と同じに見えるのですが、毎月の比率変更に合わせて変えたものなのでしょうか?

従来の研究は、各アセットの比率での説明力の話なので、意図してAAを変更しているなら説明させる基本ポートフォリオもそのAAの比率にしないと変じゃないですか?従来の研究でもその後の研究でも月次のリターンとポリシーアセットアロケーションなどで比較してるので、毎月ポートフォリオの比率が変わるなら、基本ポートフォリオも毎月その比率に合わせてます。

2015.06.07 19:49 吊られた男 #zdvXpt9s URL[EDIT]
426:

※424:Tansney Gohnさん
そうですね。少し遅れて、でも遅れすぎない程度に、ついていけばパフォーマンスは上がりそうですね。
GPIFはSAAというよりは、ポリティカルなAAのPAAと呼んだ方がいいかもしれませんね。

2015.06.07 20:18 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]
427:

※425:吊られた男さん
ランダムポートフォリオは、シミュレーションした中の1つです。計画ポートフォリオと同じように動いたものを例示したのです。株式のウェイトを0から1までの一様乱数とし、債券のウェイトを1-株式としたものです。毎月無コストでリバランスします。

ポリシーアセットアロケーションが基本ポートフォリオの配分比率の事として回答します。

意図してAAを変更しているのは、ポリシーアセットアロケーションからの意図的な乖離なのでアクティブな判断です。そのアクティブな判断の寄与が、基本ポートフォリオに対してどのくらいあるかを調べるときに、アクティブな判断でAAが変わったからと言って基本ポートフォリオのAAを変えるのは違和感があります。

ブリンソンのペーパーでも、ポリシーリターンを「the fund's benchmark return for the period, as determined by its long-term investment policy.」としています。

2015.06.07 20:43 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]
431:

おはようございます。
今回は本当に厄介なお願いをしてしまったようで…。
でも、本当にありがとうございましたm(__)m

専門的な事は何度読み返してもわかりませんでしたが(コラ!)、とら先生の『はい!ここ、テストに出ますよー』的なところは理解できたつもりです(笑)

アセットアロケーションって、資産全体の配分ですよね?(そこからかい!)
知識が乏しかったり、とんでもなくチキンなハートだったりで、若くても100%普通預金という人はおられるでしょう。
でも、逆に100%定期預金って方はおそらくいらっしゃいませんよね?(^_^;)
それと一緒で、宝くじで2等ぐらいに当たった人や退職金を手にして気が大きくなってるオッチャンならまだしも、良識ある初心者であれば、そこは無理はしないと思われます。
私のように外貨建て資産に喘いでいるバカ者もいますけどね(笑)

問題はポートフォリオだと思うんです。
情報がドバーっと入ってくる時代なので、それを始める前に知ってしまうとたしかに戸惑うと思います。
資産規模がすごければ、アセットアロケーションもポートフォリオもわかるんですが、私個人の意見としては、ポートフォリオはある程度は無視、言いすぎかな、軽視してもよいかなと。
シンプルに、自分と相性の合う物(比較的わかりやすいと思える物)を、それぞれの顔が見える範囲でやる事の方が大切だと思うんですよね。
たしかに集中させるのはよくないけど。
違うかな…。

すみません、また長文になりそうです(^_^;)

まったくの個人的思考ですが、とら様には何度かお話しした事があると思うんですけど…出口の更に出口対策の方がポートフォリオより重要だと思うんです。
1ヶ月前まで山登りをしていた義父が、この春急逝して、人の命の儚さを痛感しました。
元医療関係者だった私でもです。
たしかに、インフルエンザでも病院に行くだけで大仕事ですもん、パソコンで売買したり金融機関に出向く時間が全員に与えられるわけじゃない。
自分だけが理解していてもダメだって事です。
とっても資産価値のある物でも、知識がない人からすると邪魔でしかなーい(´;ω;`)
私なんて、周りの主婦友から見れば『大博打打ち』ですからねぇ(笑)

なんだか論点がズレまくってきましたが、本当にありがとうございました。
友人には『あれこれ難しい事を考えずに、興味があるんならやってみんちゃい』と言いますね。


うちねぇ、ポートフォリオを決めて、それに沿っていくまでは出来そうやけど、リバランスが無理そうっちゃね。
ほったらかしで、且つ、バランスを維持する…難しい事を言うてじゃわぁ。
そこまで緻密によぉやらんちゃ。
それより、相方が知らん間にめっちゃ勉強しちょって、亡くなった時にETFとか遺してくれた日にゃ、『これ何なん!?どねーすりゃーええんかいね!大迷惑っちゃ!』とか、たぶん思うじゃろうねぇ。
うちは欲深いけん、すぐには売らんで、なんとか利益出しちゃろうと勉強するやろうけど、それでもあの時は本当にバタバタやけん、そんな精神的余裕はないっちゃねぇ。

山口弁で本音を書いて書いてみました(笑)
花燃ゆの雰囲気を、明治維新の息吹を感じて頂けたらと思います(笑)
本当にありがとうございましたm(__)m

2015.06.08 07:59 みみん #yLibkmaY URL[EDIT]
435:

※431:みみんさん
そうです。アセットアロケーションって、資産全体の配分です。
ポートフォリオはある程度は無視、軽視してもいいと思います。実際、私はアセットアロケーションも、ポートフォリオもそれほど重視していません。
おっしゃるようにシンプルに、比較的わかりやすいと思える物を、それぞれの顔が見える範囲でやる事の方が大切です。自分の保有資産がどういう状況なのかを把握しやすいのが一番です。

専門的な話は、ちょっとあれでしたかね・・・余計わからなくしちゃったかも。でも、「資産の配分とかはあまり気にしなくていいよ」というのが結論です。その結論に至る根拠を説明するための専門的な話なので、そこはあまり気にしなくて大丈夫。

山口弁いいですね。本当は口調が強いんでしょうけど、テキストだとなんだかなごみますね。

2015.06.08 11:03 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]
436:

その長期のポリシーアセットアロケーションが無限に一律という前提はないかと思います。あくまで年金基金等で、その任意の期間のポリシーアセットアロケーションが一律という前提でも比較です。ブリンソンの研究では四半期のリターンデータを使っており、後続のヴァンガードは月次リターンなどです。(日本の研究でも月次リターンとその期間のポリシーアロケーションを利用)

あくまでその四半期や月次といった特定期間のリターンはどの銘柄を持っていたか、どの銘柄をいつ売って何をいつ買ったかなどではなく、その期間にどのアセットにどれほどの比率投資していたかが重要、って話かと。論文を読む限りはそう読めます。

時間を無限とも言えるほど長く伸ばした超長期のポリシーアセットアロケーションとその中で機動的にアロケーションを変える運用の比較の話はしてないのでは?
仮に「株式50%:債券50%の基本アロケーションでも最初の10年は株だけで残りの10年は債券だけ」みたいな話はしてないでしょう。

2015.06.08 14:10 吊られた男 #zdvXpt9s URL[EDIT]
437:

※436:吊られた男さん
無限に一律という前提は私は置いていませんし、無限の超長期も想定していません。
ブリンソンのペーパーは回帰分析なので、「どのくらい説明力があるか」の問題です。「どのくらい重要か」ではないと思います。
また、ポリシーアロケーションと機動的にアロケーションを変えるときの効果については、ブリンソンのペーパーでは「Quadrant 2 represents the return effects of policy and timing. Timing is the strategic under or overweighting of an asset class relative to its normal weight, for purposes of return enhancement and/or risk reduction. Timing is undertaken to achieve incremental returns relative to the policy return」ということでしょう。

2015.06.08 14:41 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]
443:

この手の議論で、長期的にアセットアロケーションを変更させる場合にもポリシーアセットアロケーションは変更させないという話はしてないと思いますよ。
なのでツッコみ方が変だという話をしています。

例えば、以下は私のブログでも引用した資料ですが、同じようにポリシー・アセットアロケーションの説明力の検証が簡単にまとめられた資料があります。
http://www.saa.or.jp/journal/prize/pdf/2008komatsu.pdf
 
この中でもパフォーマンス測定として使われるポリシー・アセットアロケーションのリターンは、月次リターンでの比較であればポリシーリターンも月次で取っています。その1ヶ月の値動きはその1ヶ月のアセットアロケーションで大部分が説明がつくんじゃないかという話です。
ファンドでは月次リターンを採用しながらダイナミックにアセットアロケーションを変えているのに、ポリシーリターンは10年の平均値というようなことはしていません。仮に毎月ランダムにアセットアロケーションを変えるなら、ポリシーリターンもそのアセットアロケーションに応じたものに変えるのが本筋でしょう。

2015.06.08 18:30 吊られた男 #zdvXpt9s URL[EDIT]
444:

私自身もブログで、アセットアロケーションがリターンの大部分を決める説には疑問を呈してますし、肥大化されてるという認識を持っています。
が、その比較が事実上基本ポートフォリオを持たないようなランダムポートフォリオなどに対した説明力がないとか、では少し説明方法が違うんじゃないかと思った次第です。

2015.06.08 18:39 吊られた男 #zdvXpt9s URL[EDIT]
447:

※443:吊られた男さん
小松原氏のペーパーでは、「各ファンドのポリシーリターンは(4)式より各ファンドのポリシー・ウェイトと、各資産クラス・ベンチマークの月次トータルリターンの積和から求めた」とあります。
その(4)式には、リターンは時系列変化を表す添え字(t)がありますが、ウェイトには(t)の添え字がありません。ウェイトは時系列変化しないという前提の式ですね。

2015.06.08 20:58 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]
448:

※444:吊られた男さん
ランダムポートフォリオの例は、基本ポートフォリオから乖離するリスクを取ると説明力が低下することを示す意図です。

2015.06.08 21:08 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]

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