国の借金1177兆円で、国がつぶれる?

国の借金が1,000兆円を超えていて大変だ、というのは半分は本当で、半分はウソです。

まず本当のところから。
日本銀行の資金循環統計では、一般政府部門の金融負債額は1,177兆円です(2014年9月)。
ですから、政府の借金が1,000兆円を超えているのは本当のことです。


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1,000兆円を超えていて大変かどうかですが、これは主観的な判断になります。いまのところは置いておきましょう。

次にウソのところ。
国の借金は1,177兆円ですというときに、何の断りもなく政府を「国」に置き換えています。

一般政府は行政府(行政機関)として国の運営に当たりますが、だからといって政府が国そのものではありませんよね。国は主権者たる国民で構成されていているのです。そして、国の一機関として行政府があるのです。

ですから、正確には1,000兆円を超えているのは、「(国の一部門である)政府の借金」というべきなのです。

後でまた説明しますが、国の借金と政府の借金は意味が異なります。

日銀の資金循環統計で示している1,000兆円を超える負債は「政府の負債」です。


部門別の資産と負債の状況


部門別の資産と負債を積み上げたのが以下の図です。

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政府の負債は赤枠で囲った部分です。


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全体の中でピンクにしたのが政府の負債です。


上の図からわかっていただきたいのは、部門ごとの資産と負債を積み上げた数値はバランスするということです。企業の貸借対照表のように、トータルの収支は合うのです。

国ということで考えれば、一般政府だけでなく、国民である「家計」、国民の経済活動の主体となる「非金融法人企業」、規模は小さいものの「民間非営利団体」、そして国民の金融仲介を担う「金融機関」も含めてみるべきです。

一般政府、家計、非金融法人企業、民間非営利団体、金融機関までの国内部門をみると、資産は6,516兆円、負債は6,190兆円となり、差し引きでは325兆円の金融資産を持っていることになります。

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資産額から負債額を引いた、国内の純金融資産325兆円は、海外部門の負債(日本国から見れば対外純資産)の322兆円をバランスしています。日本は国内では資金余剰で、対外純資産を持っているのです。

本来、国の借金という場合、政府部門や家計や企業部門も総合した国全体のバランスで見て、対外的に借金しているかどうかで見るべきです。で、実際のところ対外的には借金はなく、日本は純債権国なんです。


局所的な議論


政府部門の負債額だけを取り上げて1,000兆円を超えているから大変だ、というのは局所的な議論になってしまう、というのが私の意見です。

問題の本質は、負債の負担と資産の徴収の非対称性にあると思っています。

政府の負債は、最終的には国の主権者たる国民ひとりひとりの負債になります。一方で、国民ひとりひとりの金融資産は私有財産ですから、政府が徴税権などを使って強制的に徴収しない限り、政府のものにはなりません。


政府の借金を減らすには


政府の借金である国債を減らそうとすれば、増税によって家計の金融資産を取り崩して政府の負債を減らすか、民間の企業がどんどん稼いで労働者の所得税と法人税の税収がアップするか、あるいは政府が社会保障や公務員給与をカットするか、不動産などの国有資産を民間に売却するかなどですね。

極端なシナリオとしては、増税ではなく、預金封鎖で国全体のバランスシートを軽くするかもしれません。預金封鎖については、そのうち書こうかなと思っていますが、いまのところは考えなくて大丈夫でしょう。

ともかく、話をまとめると、国の借金1,000兆円というのは正確な表現ではありません。国と政府を混同して、負債だけを取り上げるからややこしくなるのです。

政府の負債額は1,177兆円ですが、国内の純資産額は325兆円の黒字です。

将来的に家計の負担が増えることはあるでしょうが、借金で国がつぶれることは考えられません。

ですから、国の借金で国がつぶれる、円の信認がなくなって超円安になる、お金の価値がなくなってハイパーインフレが来るといった説は、私は話半分に聞くことにしています。

 

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