2015年01月 の記事一覧

機を見て全財産を投資する

面白い記事を見かけました。

杉村太蔵「機を見て全財産を投資する」のがタイゾー流投資術 [外部記事]

杉村太蔵さんが投資を始めたのは2012年11月。民主党政権の末期で衆議院の解散が見えた時期だそうです。

当時の日経平均株価は8,000円程度なので、そのとき投資していればいまでは2倍になっていますね。5,000万円を一気に投資していれば、いまでは1億円です。


おバカなキャラで売っていますが


杉村さんはちょっと軽めでおバカなキャラで売っていますが、本当のところはちょっと違うのかなと思います。ペーパーテストでは測れない部分で賢いというか、タフな面があるというか、不思議な魅力がありますね。

2012年11月に投資を始めたのは素晴らしいタイミングです。

それに全財産(これは比喩的な表現でしょうけど)を投入するのは腰が据わっていないとできないことです。


長期戦か短期決戦か


いまの時点で書いても後出しジャンケンですが、私は日経平均なら10,000円以下は買いゾーン、16,000円以上は売りゾーンだと思っています。

10,000円以下で仕込んで、16,000円で売れれば60%のリターンです。

ちなみに以下は日経平均株価の過去20年の推移です。

日経平均株価 小黒とら

長期投資向きのチャートではありませんね。

長期的にドルコストで投資するのも一つの方法ですが、杉村太蔵さんのようにタイミングを見て投資するのも一つの手です。

私は「長期に投資する資産」と「中短期に投資する資産」をわけて管理しています。タイミングは自分で判断したいので積立型の投資はしていませんし、毎月分配型の投信も持っていません。

タイミングを自分で判断したい理由は、タイミングがとても大事だからです。

長期投資もいいのですが、中短期の投資も組み合わせてはいかがですか。

ハイパーインフレ 来る?来ない?

前回はインフレでモノやサービスに対する需給の話でした。今回は大前研一さんや藤巻健史さんといった著名人がよく口にする「ハイパーインフレ」についてです。日銀の金融緩和についても後半で触れます。

前回の記事で村のパン屋さんのたとえを出しました。

村の経済が発展していくなかで、パン屋さんも設備投資や雇用の創出で事業規模を拡大していきました。

村の経済規模が大きくなって、村人は1,000人になっています。1人が1日に10個のパンを必要としています。村のパン屋さんは1件しかなく、そこでは1日に10,000個のパンが作れます。

村のパンの値段は1個100円でした。


ハイパーインフレ


あるとき、となり村と戦争が勃発してパン屋さんが空爆され、パン屋さんのかまどはほとんどが使えなくなってしまいました。生産量が激減です。1日に10,000個を作っていたのに、空爆後は1日に100個ほどを手作業で焼くのが精いっぱいです。

それにとなり村との戦争で負けてしまい、村が賠償金を負ったため村で使えるお金も激減しました。パン屋さんは設備を増やすこともできません。

パン屋さんの生産力は1日に100個です。供給力の壊滅による絶望的なモノ不足です。

需要があるのにモノがない。

パンが欲しければ高い値段を出してでも買うしかないです。みんなが欲しがるのですから。戦争前は1個100円だったパンがもう100円では買えません。

モノが圧倒的に不足している状況なら、どうせ手に入らないのですから、パン1個が1000円でも100万円でも、100兆円でもどうでもいいです。

戦争や大きな政変による国内経済の混乱などで圧倒的なモノ不足に陥ってしまい、貨幣経済が崩壊するのがハイパーインフレです。過去のドイツ、日本、ジンバブエの例をみると、ハイパーインフレが起きるのは紙幣の増刷が原因ではなく、モノを供給する力が壊れたのが原因です。

モノを供給する能力が壊滅したのでモノ不足に陥り、その結果として紙幣が役に立たなくなったということです。


日銀は能動的に紙幣を刷れない


紙幣を増刷するとハイパーインフレになるという説は、因果関係がちょっと違うでしょうと思いますね。

それと、「日銀による金融緩和」は「紙幣の増刷」とはイコールではありません。日銀は国債を買っていますが、それはほぼそのまま市中銀行との日銀当座預金残の増減で終わっています。ざっくりいうと、日銀が国債を買ってマネーを供給しても、それは市中銀行のところで留まっているということです。

マネーストック=市中銀行預金+現金(日銀券+貨幣)
マネタリーベース=日銀当座預金+日銀券

日銀がやっているのは「マネタリーベース」の拡大です。国債を買って「日銀当座預金+日銀券」を増やそうとしています。

日銀券は、市中銀行が日銀当座預金を引き出したときに発行されます。逆に、市中銀行が余った日銀券を日銀に戻すと日銀券は回収され当座預金が増えます。

日銀は、日銀券の発行と回収に関して受動的なのです。日銀券の発行を日銀が能動的に行えるものではありません。

マネーストックが増えるためには信用創造(≒融資の増加)による銀行預金の増加が必要ですが、企業がお金をそれほど借りないこともあって、日銀が金融緩和をしても思ったほどには市中にお金が流れていないのが現状です。

そういう状況で、「アベノミクス・黒田バズーカ → 紙幣の増刷 → 紙幣の信認低下 → ハイパーインフレ」というのは説得力に乏しいです。

結論:
ハイパーインフレにあおられないようにしましょう。

インフレが発生するには 強い需要と弱い供給が必要では?

今日の東京は雪で寒いです。
最近の相場は私にはアゲインストですし、こういう日はコタツにくるまって猫と戯れながら、ミカンでも食べつつブログを楽しむのがいいですね。
(我が家にはコタツも猫もいませんが・・・)

大前研一さんや藤巻健史さんといった著名人がハイパーインフレが来るといっています。大前研一さんは筋金入りの国債暴落とハイパーインフレ論者ですし、参議院議員の藤巻健史さんに至っては国会でも取り上げています。

今回はインフレについてです。次回にハイパーインフレについて考えます。


インフレが起きるメカニズム


どうしたらインフレになるのでしょう。インフレが起きるメカニズムについて考えてみます。

経済学的な正確性には少し目をつぶっていただくとして、ざっくり以下がポイントです。

1. モノやサービスに対する需要と供給(モノの希少性)
2. 決済手段としてのお金の流通量(お金の希少性)
3. 期待

今回は「モノやサービスに対する需要と供給」に話を絞ります。お金の流通量については次回のハイパーインフレで触れます。期待については割愛します。


村人の需要


ある村ではパンが1個100円です。村人は20人いて、1人が1日にパンを10個食べます。そうすると村でのパンの総需要は1日200個ですね。

村にパン屋さんは1件しかなく、そこでの生産は1日に200個が限界です。

需要200個 = 供給200個

あるとき村人が1人増えて21人の村になりました。村でのパンの総需要は1日210個です。でも、村にはパン屋さんが1件しかなく、そこでの生産は1日に200個が限界です。

需要210個 > 供給200個です。

困りました。

村人のうち11人は10個買うことがきても、10人は9個しか買えません。そうなると、100円のパンに対して、「110円出すから10個売ってよ」という人も出てきます。

つまり、「需要が増える」から「モノの値段が上がる」のです。


パン屋さんの供給


村人がどんどん増えていってパンの需要がどんどん増えていく状況であれば、パン屋さんはパンを焼くためのかまどを増設し、人も雇って生産量を増やします。そうやって需要の増加に供給量を追いつかせようとします。

生産余力が急に大きくなっても、かまどの稼働率を調整して需要と供給を一致させれば、あるいはちょっと品薄にしておけば、パンの値崩れは防げます。

パン屋さんはあらたな風味のパンを開発して需要を掘り起こすかもしれません。新作のパンも売れるようになると、もう一つかまどを増やして人を雇うかもしれませんね。設備投資と雇用の創出です。

さらには、生産に余力が生まれたことで、となり村にもパンを売りに行くかもしれません。輸出です。

パン屋さんは生産を増やしたことでもうけが出て、パン屋にかまどを売った村人ももうけが出て、かまど屋に材料を売った村人ももうかって、パン屋の従業員は所得を得ます。そうやって村人は潤うわけです。

もうかった村人は消費を増やすでしょう。パンを多く買ったり、値段の高いパンを買ったりするかもしれません。そうするとますますパン屋さんはもうかって・・・

そうやって村の経済が拡大します。

日本の場合、90年ごろまでは村の中で働く人も増えて、モノやサービスに対する需要も伸びていました。だからインフレもプラスで推移していたのです。

しかし、日本の場合はパン屋さんの供給力が強いので、需要が強い80年代であってもインフレ率はおとなしめに抑えられていました。80年代から今に至るまで、日本のインフレ率は米国のインフレ率をおおむね2%下回る水準で推移しています。

インフレ 小黒とら


日本の企業の生産力が強いことに加えて、冷戦の終結で世界的に供給力が増えたことが90年代以降のデフレとして災いしているというのが私の見方です。


いったんまとめ


・インフレというのはモノやサービスの値段が上がることです。
・モノに対する強い需要があるのに供給が追い付かないと値段が上がります。
・日本はモノもサービスも圧倒的な供給力があります。

なので、もともと日本では低インフレの経済体質なのです。

結論:
日本はもともと低インフレ体質の国ですし、世界的に供給力が増えているのでインフレをそれほど懸念する必要はないでしょう。むしろデフレへの逆戻りを懸念すべきです。

日本国内の格差なんて大したことない・・・?

ピケティの21世紀の資本があいかわらず話題ですね。電車の中吊り広告でもピケティ関連の広告が目に留まります。

以前の記事「『格差拡大の根本的な力r>g』だから、労働者より資本家になったほうがいい?」では、ピケティの本から学ぶことは、逆説的ですが、r>gであるなら、労働ではなく投資で稼ぐ方がいいと書きました。[記事]

「格差社会 『1%の富裕層が世界の富の50%を保有』を別角度から」の記事では、世界的な人口動態から少数のリッチと多数の貧困者が、少数のリッチとより多くの貧困者という社会構成になるのが問題ではと指摘しました。[記事]

今回も世界的な視点から格差問題を考えたいと思います。


1人あたりGDP


体感的な豊かさをみるには、GDPそのものよりは1人あたりのGDPのほうが適しています。そこで国連の2012年の統計を使って、207の国と地域の1人あたりGDP(米ドル建て)を値の大きい順に並べました。(以下、国と地域をあわせて国といいます)

経済格差 小黒とら


かなり歪んだ分布になっています。1位はリヒテンシュタインの158,977ドルです。米国は17位で51,163ドル、日本は18位で46,838ドルです。

1人あたりGDPが日本より大きい国は、米国を除くと日本より人口の少ない国ばかりです。3,400万人のカナダ、2,200万人のオーストラリア以外の14か国は人口1,000万人未満です。なお1位のリヒテンシュタイン、2位のモナコは3万人台です。

ともかく日本は1人あたりGDPでみて世界の中では裕福な国といえます。


地球的規模の貧富の差


さきほどのグラフを1人あたりGDPの階層で区切って国数を調べたものです。少数の裕福な国と大多数の裕福でない国に分かれています。

経済格差 小黒とら

半数以上の国が1万ドル以下です。(207か国中124か国)

1人あたりGDPが高い国の人口は少なく、1人あたりGDPが低い国の人口は多いという傾向も合わせると、世界的な経済格差は極端に大きいといえます。

なので、世界的な視点から見ると、ごく少数の人間が多くの富を持っているということになります。


さて、日本


トマ・ピケティの本が話題になっていますが、やはり先進国の中の資本収益率と経済成長の関係なのかなと思っています。

1%の富裕層が世界の富の50%を持っているという地球規模の貧富の差と、資本主義が発展した先進国の中での貧富の差は、やはり別角度で考えたほうがよさそうですね。

日本国内に目を向けると、確かに貧富の差は大きくて、持てる人と持たざる人、株式投資や会社経営でリスクを取って成功した人とそうでない人の差が大きくなっています。

ただ、地球規模の貧富の差を考えたら、日本に生まれ育って日本で株式投資ができる(場合によっては起業できる)ことは非常に幸せなことです。

投資資金があってその気になれば、投資や起業でリスクを取れるのですから。

関連記事
「格差拡大の根本的な力r>g」だから、労働者より資本家になったほうがいい?
格差社会 「1%の富裕層が世界の富の50%を保有」を別角度から
トマ・ピケティが誰かに似ていると思ったら

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不安を煽られて投資するのは考え物です

今回はインフレと投資についてです。

インフレにあおられて投資するのは考え物です。

・ハイパーインフレで円の価値が暴落するから外貨に投資しましょう
・インフレで生活が苦しくなるから、預金を投資に回して防衛した方がいいですよ

こういうストーリーをよく聞きます。

なんか最近は「市場見通しがいいから投資しましょう」というのではなく、「このままでは大変なことになるから投資しましょう」というストーリーが増えていますね。

国債の暴落、円安、低金利、インフレ、それに加えて老後に○千万円必要ですといわれたら不安になりますよね。だから投資しようかな・・・となるのですが、前提をよく吟味した方がいいです。

本当に国債の暴落や大幅な円安が来るのか、過度なインフレが来るのか、本当に老後にウン千万円(最近の日経では9千万円という数字がありました)必要なのか、冷静に判断しましょう。

あおりに乗らないのも金融リテラシーのひとつです。


インフレ税


「あなたは「インフレ税」を知っていますか?」という記事があったので紹介します。(記事

記事によるとインフレ税とは、「インフレの進行によって貨幣の価値が下落する一方で、金利を意図的に低く抑える政策、つまり実質的に民間から政府への所得移転が起ることを「インフレ税」と言います」

たしかに考え方によっては、「実質的に民間から政府への所得移転」という側面があります。でも、それはインフレの一面をとり上げているにすぎません。インフレとは貨幣価値の低下のことですから、購買力でみたときの債権者の債権価値が弱まって、債務者の負担が減るということです。

なので、インフレによる負担のシフトは民間と政府の関係というよりは、債権者と債務者の関係で整理したほうがいいですね。

「インフレ税」という用語は、ともすると感情で反応しやすいので注意が必要です。


インフレをめぐる矛盾した話


さきほど引用した記事で矛盾しているのでは??? と思ったところがあるのでそれも紹介します。

マンション投資について悲観的に語っているところです。不動産はインフレに強いのですが、語っている人たちが証券投資信託の関係者だからなのかなぁ・・・という気がします。

それはいいとして、話を戻すと不動産価格は株式に少し遅れて動く傾向があります。

インフレ税 小黒とら

この図は東京の中古マンション価格指数(不動研住宅価格指数)と日経平均の動きです。不動産がこのさき悲観的なら、株式にも悲観的でないとおかしい気がしますね。

インフレが来るぞー、投資しましょうー、でも不動産はダメだよー

というのは矛盾ですよね。

ちなみに、長期的にみてスケールを変えると以下です。

インフレ税 小黒とら

株の方がボラティリティが高いのです。不動産価格と株価との動きから見ると、株価はいい線に近づいている、つまり相場の成熟局面に近いと私は見ています。

これからは新規に投資するとか、投資を増やす局面というよりは、利益を伸ばしながらいつ手仕舞うかを考える時期に近づいているとみています。


インフレを懸念して投資に踏み切るべきか


インフレが来るから投資しましょうというストーリーは説得力があるのでしょうか。

先日、ECBが量的緩和に踏み切ったように、欧州もデフレ気味です。日本も日銀が量的緩和を拡大しているにもかかわらず、物価は目標の2%に届きそうもありません。

物価というのは中央銀行によるマネーの供給だけで決まるものではありません。

私はインフレをそれほど懸念していません。デフレに逆戻りしない程度のプラス1%近くのインフレなら御の字でしょう。

高く見積もっても日銀が目標としている2%です。

では、2%のインフレが来るからといって、預金を投資に回すべきでしょうか。

投資の場合、10%程度のリスクがあるとすると、インフレ率の2%に負けないように投資したつもりが、マイナス10%とかマイナス20%になっていたということもありえます。

投資をするときは冷静に。

あおられて投資するのは避けたほうがいいですね。

毎月分配型投信 投資するときに注意すべきポイント

毎月分配型投信の注意すべきポイントについて書きます。

毎月分配型投信は人気が高いので、非常に多くの方が投資しています。モーニングスターのサイトをみると純資産総額の上位はインデックスファンドか毎月分配型投信のどちらかです。

毎月分配型投信の純資産額の多い順に3つあげると以下になります。

1. 新光 US-REITオープン (愛称:ゼウス)
2. ラサール・グローバルREIT
3. フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド

新光 US-REITオープン (愛称:ゼウス)は、純資産総額が1兆5千億円を超えていますし、ラサール・グローバルREITは1兆3千億円台です。この2つはリートに投資するファンドです。
第3位のフィデリティ・USハイ・イールド・ファンドは、米国の低格付け債券に投資するファンドで純資産総額は1兆2千億円弱です。

3つのファンド合わせて4兆円もありますので、毎月分配型投信の人気がいかに高いかがわかります。


メリットとデメリット


毎月分配型投信のメリットは、毎月分配が受けられることでしょう。期間損益に関係なく、ほぼ同じ分配が支払われますので、月々の分配額が見込みやすいのが受けている理由だと思われます。

一方で、デメリットとしては複利効果が得られないことがあげられます。運用するときの資金の効率が悪いのです。

どういういうことか、具体的にみてみましょう。

試算したのは、新光 US-REITオープン (愛称:ゼウス)、ラサール・グローバルREIT、フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの3つです。


複利効果の差について


それぞれのファンドの月報には以下の情報が載っています。

1. 直近の基準価額
2. 設定来の騰落率
3. 設定来の分配金の総額

そこで、「1.と3.の合計」と「2.を基準価額に換算した数値」とを比較します。前者は設定時に投資した投資家が実際に得た総額、後者は理論的な分配金再投資の金額となります。

その差は、複利効果の差といえます。

結果は以下です。

毎月分配型投信 小黒とら



この差をどう考えるか


新光 US-REITオープン(愛称:ゼウス)、ラサール・グローバルREITと、フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドとでは、投資の期間が違うので単純な比較はできないことにご注意ください。

ファンド間の差をみるよりは、どれも得られなかった利益が大きいことに注目してください。

市場が大きく上昇しているときは得られなかった利益も大きくなるのです。

なお、相場との関係では、相場が上昇しているときは(=プラスのリターンの時は)分配しないファンドの方がよく、相場が下落しているときは(=マイナスのリターンの時は)毎月分配の方がやられは少なくなります。


まとめ


毎月分配型投信の注目すべきポイントは利益の差です。資金効率の差といってもいいでしょう。

毎月分配型投信への投資は、資金効率が悪いというデメリットと毎月分配が受け取れるというメリットを比較しての選択になります。どっちがいいかは個人の選好の問題ですね。

逸失利益がもったいないと思えば毎月分配型投信には投資しない方がいいですし、逆に、逸失利益があっても毎月定期的に分配を受けられる方がいいというのであれば、投資するという選択もあります。

毎月分配型投信 みずほ逆転勝訴に思うこと

今回は、毎月分配型投信の販売についての訴訟の話です。
みずほ銀行など販売側が二審で逆転勝訴しました。[ニュース]

流れとしては
1) 毎月分配型の投資信託を購入した客が、分配金に関する販売時の説明不足で損をしたとして、投信の販売会社であるみずほ銀行などに賠償を求めた。
2) 一審・東京地裁は「説明義務違反があった」として損害賠償を認めた。
3) 二審・東京高裁は「原告には投信について5年以上の投資経験があり、分配金について誤解していたとは考えづらい」と判断し、一審の判決を取消した。
原告の逆転敗訴(みずほ側の逆転勝訴)です。

一審と二審で判断が分かれたのは、
1) 一審では、勧誘時のパンフレットに元本取り崩しの可能性について具体的な説明がなかったことで説明義務違反を認定。
2) 二審では、「一律に目論見書やパンフレットに記載されていなければならないものではなく、口頭で説明されている」と指摘。
この違いが判断の分かれ目です。

私が思うに、一審は目論見書などの記載内容での「形式判断」、二審は投資家の状況を踏まえた「実質判断」の違いかと。


妥当な判断でしょう


投資歴が長くても誤解している可能性はありますが、二審の裁判所が「分配金について誤解していたとは考えづらい」と判断したのですから、損害賠償は認められないですね。

もし、投資の初心者で毎月分配型の投信のしくみをまったく知らず、販売員も説明せず、あるいは誤った説明をして、目論見書にも元本取り崩しの可能性について具体的な説明がなければ、錯誤による無効や損害賠償を主張できるかもしれません。

裁判の詳細がわからないのでこの事案についてではなく、一般論としてになりますが、私は一審の形式判断よりは、二審の実質判断のほうがいいと思っています。


毎月分配型投信


投資信託協会の「投資信託に関するアンケート調査報告書-2014年(平成26年)」で、投信の分配に関する認知について興味深い結果があります。

分配金について、「支払われた額だけ基準価額が下がる」と認識しているのは、31.2%という結果が出ています。

3年前の調査では20.4%だったので、それに比べると31.2%は向上していますが、それでもまだまだ低いです。

投資家も毎月分配型投信のしくみを理解することが必要ですし、販売側もわかりやすい説明が必要ですね。毎月分配型が資産運用として合理的かどうかの議論はひとまず置いておいて、少なくとも投資家の理解と販売側の説明が足りていないのは確かでしょう。


思ったこと


毎月分配型の投信について、勧誘時のパンフレットに元本取り崩しの可能性について具体的な説明があったか、なかったかという一審の形式論ではなく、顧客の属性を踏まえて具体的に理解できる説明をしたかを総合判断すべきという二審の実質論のほうが妥当です。

目論見書やパンプレットに書いてある、書いてないという論点よりは、きちんと理解できる説明をしたかどうかで判断する方が投資家にとってもいいはずです。

投資家はより勉強する必要がありますし、投信の販売側はわかりやすい説明が必要ですね。

財政破綻で日本はギリシャのようになる?

ギリシャの総選挙で、急進左派連合(SYRIZA)が単独過半数に迫る大躍進です。単独過半数なのか連立なのかは、いまのところわかりませんが、ともかく第一党となるのは間違いありません。

急進左派連合のチプラス党首は「壊滅的な緊縮は終わった。恐怖と独裁、屈辱と苦難の日々は終わった」と宣言しました。

どこの国でも緊縮政策は嫌がられます。ギリシャ人からすると我慢の限界といったところでしょう。ドイツからみると別の見方でしょうけど。


Grexit


この先、単独政権なのか連立なのか、連立だとしたらどこと組むのか、そのとき対EU、対ドイツとの交渉はどうなるのかがポイントになりそうです。

このところGrexitという単語をよく目にします。GreeceとExitを合わせた造語で、ギリシャがユーロ圏から出ていくことを意味します。グレグジットというらしいですが、発音しにくいです。

Grexitについてですが、いくつかシナリオがあります。ただ、いまのところ不透明さが強いので、「下手な考え休むに似たり」になりそうです。

ギリシャの左派の躍進はだいぶ織り込まれていたと思いますので、市場にショックが走る状況ではないです。今後の成り行きを見守りましょうといったところですね。


ギリシャは明日の日本か?


ギリシャの経済破綻をもって、日本もうかうかしてられない。いまのギリシャは明日の日本だという論調をたまに見かけます。

財政赤字という点では、日本はギリシャのように危ない。
ギリシャの財政危機は日本にとっても対岸の火事ではない。

といった感じです。

でも、日本とギリシャって財政赤字以外のところで大きく違うのです。

ギリシャはEUの中で「労働生産性が低いわりには、労働コストは高い」国です。ドイツやフランスに比べて、「それほど働いているわけではないのに給料は高い」のです。だからこそドイツはギリシャに構造改革を迫っているのです。

また、ギリシャには国際競争力の高い主要産業はあまりありません。それにだいぶ改善されているとはいえ、ギリシャは財政と経常の双子の赤字の国です。

ギリシャと日本の経済構造の違いを無視して、財政赤字だけをとり上げて日本がギリシャのようになると論ずるのはちょっと乱暴です。

財政赤字を放っておいていいわけではありませんが、日本とギリシャはだいぶ違います。

コヒーレント市場仮説 投資に向いている時期

今回はコヒーレント市場仮説(Coherent Market Hypothesis)についてです。

コヒーレント市場仮説というのは、トニス・ヴァーガーが「複雑系と相場」という本で唱えている説です。「複雑系と相場」の原題は”Profiting From Chaos”です。意訳すると「カオス相場で儲ける方法」といったとこでしょう。本棚にあった本に久しぶりに目を通したので紹介します。

コヒーレント市場仮説 小黒とら


主なテーマは「コヒーレント市場」です。
コヒーレントとは「干渉性がある」という意味で、本ではレーザー(指向性のある光波)が例にあげられています。

本から引用すると「臨界点未満では、レーザーは通常のランダムな光を発する。臨界点を超えると各分子からの光は結合する、すなわち隣の分子が生成した光と同位相で光を発するのである」

ある臨界点を超える前はランダム。臨界点を超えると同位相で揃った光を発します。

臨界点を超えると相転移するという物理学の世界の話しですが、この相転移は株式市場でも見られるというのがコヒーレント市場仮説です。

投資家ひとりひとりがランダムな相場観を持っているときもあれば、みんなが強気で揃ってイケイケの相場観になっている時もあるということですね。


知っておくべきことは


株式相場はつねにランダムな世界とは限らないということです。

ヴァーガーは本の中で4つの状況を示しています。

1. 効率的市場(真のランダムウォーク)
2. 不安定な遷移相(非効率的市場)
3. コヒーレント市場(強気のもとでの群集行動)
4. カオス市場(若干弱気なもとでの群集行動)

興味深いのはコヒーレントな市場です。

コヒーレントな市場では、市場の動きはコヒーレントになっている(=位相が揃っている)ため予測可能性が高まります。

そういうときはリスク(ボラティリティ)が小さくて、リターンが大きくなります。ローリスク・ハイリターンです。

この本で重要なのは、コヒーレント市場仮説は「高い収益率がそれに比例したリスクを伴うことなしに達成できることを予言している」ことです。

相場は常に同じような状態ではなく、ハイリスク・ローリターン(カオス市場)のときもあれば、ローリスク・ハイリターン(コヒーレント市場)のときもあるということです。実感にも合いますね。


休むも相場


あなたが漁師だとしましょう。毎日毎日、いつでもどんなときでも漁に出ますか?

海が荒れていて危険なわりに漁獲高が期待できないときは漁に出ませんよね。逆に、天候も穏やかで転覆の危険もなく、豊漁が期待できる状況であれば、毎日休みなく漁に出ますよね。

漁師さんであれば、リスクとリターンを見極めて漁に出ると思うのです。

相場も同じです。

相場が荒れていて危険なわりにリターンが期待できないときは、資金を引き上げるべきで、相場が落ち着いていて高いリターンが期待できるときに思いっきり投資すればいいのです。

なので、私は相場の状況を考えながら投資額を調整しています。


Amazonのリンクを張っておきます。複雑系や経済物理学に興味のある方には向いていますが、古い本ですし値段が高いのであまりおすすめはしません。

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「流星ワゴン」がドラマ化 原作の読書感想文

重松清さんの「流星ワゴン」がドラマ化されました。

私は原作を文庫本で読みました。ある時期に時間を持て余すことがあって、重松清、横山秀夫、東野圭吾といった方々の本を片っ端から読んだことがあるのです。小説を読むことだけで一日が終わる生活。いまから振り返ると人生の転機でした。

選んで読んだのではなく、たまたまそこにあった本として「流星ワゴン」も読みました。ふだんあまり小説を読むことのなかった私ですが、読んでみると面白いですね。金融や経済の実用的な本を読むと知識が広まりますが、小説を読むと心が広がる気がします。

重松清さんなら、パッと思い出すだけでも「流星ワゴン」「その日のまえに」「リビング」「送り火」「ビタミンF」「ナイフ」を読みました。

読みながら引きずり込まれたのは「その日のまえに」です。これはいつか読書感想文を書くつもりです。

今日は「流星ワゴン」について


流星ワゴンの原作


原作と映像(ドラマ)は同じではないと思っているので、あくまで原作の小説のお話です。ネタバレになるようなことは書きません。

流星ワゴンの私にとっての主人公は、永田一雄(ドラマでは西島秀俊さん)でもなく、永田忠雄(香川照之さん)でもありません。

永田美代子(井川遥さん)でもありません。

原作で心を動かされたのは、流星ワゴンの持ち主である橋本義明(吉岡秀隆さん)です。
橋本親子が私にとっての主人公です。

橋本親子は脇役で、原作も永田親子を中心に描かれているのですが、私はどうしても橋本親子に気が行ってしまうのです。

しかも子供の方ではなく、原作でも影の薄い橋本お父さんの方にです。

ただ、話は橋本ではなく永田親子を中心に進みます。永田忠雄(チュウさん)は一昔前の強い男ですし、永田一雄は仕事と家庭に悩む現代のちょっと弱い男性です。強い父性を象徴するチュウさんと、悩みながら生きる一雄という関係に、私もそうですが多くの男性は自分を一雄に重ねるでしょう。

だからメインは「一雄=自分」という目線ですんなり原作も読んでいけます。


橋本親子


ただ、私はどうしても橋本親子のお父さんの方に関心が行ってしまうのです。なぜ流星ワゴンを運転しているのか、息子との関係は・・・というのはネタバレでもないことだと思いますが、ここでは書かないでおきます。

永田家のことがメインですから、橋本親子のことは原作でもあまり書かれていません。それだけに想像も膨らませながら橋本親子のことを読んでいくと、永田家のチュウさんと一雄、あるいは一雄と一雄の息子の関係にはない、別の親子関係がみえてきます。

橋本親子のお父さんこそ、私にとっての主人公です。

ドラマがどういう味付けになるのかはわかりませんが、原作は読む視点をいくつも持てる味わい深いものです。原作を読む機会があれば、ぜひ橋本親子のお父さんに注目してください。

橋本のお父さんの不器用な父性愛が、私には胸に迫るものがありました。

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