カテゴリ:マクロ経済を考えてみる の記事一覧

トランプ氏の標語を記した赤い帽子は「外国製」 比較優位と保護貿易について

「路上販売の赤いトランプ帽は外国製、就任式参加者に衝撃広がる」という記事がありました。[外部記事]

トランプ大統領のスローガン、Make America Great Againが書かれた赤い野球帽は、トランプ陣営の公式サイトで販売しているのは米国製だそうです。価格は25~30ドル。

一方、路上で売られているトランプ帽は外国製で20ドルだそうです。

外国製の方が安いですね。

今回は、比較優位と保護貿易について


外国製の帽子


米国製の帽子は25~30ドル。外国製(中国、ベトナム、バングラデシュ)の帽子は20ドル。

品質やパテント、流通経路のコスト、その他の要因で一律には比較できませんが、帽子のようなものは一般的には、先進国で作るより新興国で作る方が安いです。

人件費の要素が大きいですからね。

で、今回のテーマは人件費の低い国に(帽子製作のような)雇用が奪われているという話ではありません。

帽子の製作が外国で行われることは、米国にも利益があるという点を考えます。マクロ経済の理論的な話です。キーワードは「比較優位」です。


比較優位の考え方


米国とメキシコの関係で考えましょう。

前提1:失業者は考えません。完全雇用です。
前提2:各国の生産物は「ハンバーガー」と「テキーラ」の2種類のみです。当初それぞれの国が両方を生産します。それ以外は考えません。

かなり強引な前提です。でも、そう考えるのが分かりやすいのでこのまま進めます。

米国には労働者が12人います。メキシコにも12人います。

米国の労働者1人の年間生産量
・ハンバーガーなら6個、テキーラなら2本

メキシコの労働者1人の年間生産量
・ハンバーガーなら2個、テキーラなら1本

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このとき、貿易することで両国の経済が良くなります。


両国の生産高


両国ともハンバーガーもテキーラも必要なので、労働者12人のうち6人はハンバーガーを生産し、残る6人はテキーラを生産するとします。

そうすると

米国では年間で、ハンバーガー36個、テキーラ12本が生産できます。これで米国内の需要を満たすとします。

メキシコは年間で、ハンバーガー12個、テキーラ6本が生産できます。これでメキシコ国内の需要を満たすとします。




メキシコの戦略


メキシコの目線で考えましょう。

メキシコの労働者は生産性が低いです。(あくまで仮定の話)

そこで、

このままハンバーガーもテキーラも、両方生産していてはダメだ。米国アミーゴと話を付けてうちらはテキーラに特化しよう。テキーラをムーチョ、ムーチョでハンバーガーは生産しない。

テキーラ!

としたとします。

で、メキシコの労働者はテキーラに特化します。それは米国にもメリットのある話です。


テキーラ特化


メキシコが労働者12人をすべてテキーラ生産に投入します。そうするとメキシコ国内で12本のテキーラが生産できます。メキシコは自国で消費する6本を残して、残り6本を米国に輸出します。

で、米国はどうするか?

メキシコからテキーラを輸入できますので、米国内の労働投入量を変化できます。すなわち、ハンバーガーの生産に9人、テキーラの生産に3人です。(従前は6人、6人)

そうすると、ハンバーガー54個、テキーラ6本が生産できます。




で、米国とメキシコを合わせた従前のハンバーガー消費量は48個でした。生産量が54個に増えたので6個の余剰が生まれます。これをアミーゴのメキシコと仲良く半分こします。メキシコから輸入したテキーラ6本と引き換えに、ハンバーガー15個を輸出します。

そうすると米国人もメキシコ人も、お互いに以前よりハンバーガーを多く食べられます。

これが比較優位の財を貿易することによるメリットです。


問題点


あくまで、経済理論的な話です。

ある国が一つの産業に(テキーラの生産に)特化することは問題があります。コア産業がダメになったらその国の経済が立ち行かなくなります。なのでポートフォリオと同じように、一国の産業も十分な分散は必要です。

特定の生産品に依存する経済構造は途上国に多いのですが、それがかえって経済成長を妨げる要因になったりもします。

その点は比較優位とは別の論点として残ります。

とはいえ、比較優位の理論に絞って考えると、自由な貿易がグローバルな資源の最適配分をもたらし、世界の経済厚生を高めると考えられます。


トランプ大統領の政策


トランプ大統領が保護主義的な政策を推進しすぎると、世界経済に悪影響を与えるのではないかな・・・と思います。

一方、自由貿易が行き過ぎると、それはそれで弊害もありますね。雇用が減るとか賃金が伸び悩むとかです。(これも比較優位とは別の議論になります)

これまでの世界経済はグローバリズム、自由貿易主義を推進してきました。ここへきて米国が鮮明に自国優先を示すように、世界の大きな潮流が変わりつつあるのかもしれません。自由主義を推進する力と保護主義を求める力のバランスがどうなるかですね。

すぐにどうなるという話ではないでしょうけど、ちょっと気になります。

とりとめのない雑感でした。

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国の借金と国富について

ダイヤモンドオンラインに「『日本は借金が巨額でも資産があるから大丈夫』という虚構」という記事がありました。[外部記事]

田中秀明氏(明治大学公共政策大学院教授)の寄稿です。

今回は、日本の財務の雑感です。


概要


田中秀明氏の記事は、国の借金の大きさに警鐘を鳴らし、財政再建の重要さを主張する内容です。

国のバランスシートを提示して説明が進むのですが、思ったのは、財務省の見解に近いな・・・ということです。ちなみに田中秀明氏は元財務官僚です。国のバランスシートとその見解については財務省のサイトの方がコンパクトにまとまっていますので、そちらをご紹介します。

財務省のサイト

財務省のサイトには2009年(平成21年)時点の国のバランスシートが示されています。

資産:647兆円
負債:1,019兆円

で、資産・負債差額として、マイナス372兆円

企業のバランスシートで考えると純資産(資本の部)がマイナス372兆円ということなので、「債務超過」の状態です。


これをベースにした話


ダイヤモンドオンラインの記事は上記の債務超過状態をベースにした議論です。

国は企業に例えると債務超過の状態だ。だから財政再建は待ったなし。

という論調です。

ん・・・

たしかに、国(政府部門)の債務超過は大きいですけどね。


国富という視点


財務省ではなく、内閣府が出している資料も見てみましょう。

国民経済計算です。[資料]

これによると、国全体(政府だけでなく民間部門も含む)でみた「正味資産(国富)」は

国富(資産から負債を差し引いた正味資産に相当)は、平成26暦年末には3,108.5兆円(前年末比+2.0%、同差+60.0兆円)と、2年連続の増加となった。


とあります。

国富3100兆円です。

ちなみに過去からの推移は以下です。

img_2e833dd02a2f3ec7aca56ba4949cf26f150637.jpg
(画像出典:Wikipedia


楽観も悲観も


国富を見ればそれほど心配はいりませんが、政府の財務バランスを見ると悲観になります。

ただ、政府の負債は、裏を返すと国民の資産(貯蓄)です。

政府の負債を減らすには、国民の資産と相殺すれば良くて、つまりは増税と政府支出の抑制(たとえば国民の医療費負担の増加、行政サービスの有料化)につながりますね。

一方で、国富はそれなりにあって、対外純資産は徐々に増えています。

国全体のバランスで見たとき、政府のバランスを整える緊急性や必要性がどれほどなのか。

私は国の借金を過度に悲観はしていませんし、そうかといって手放しで楽観もしていません。

ハイパーインフレや円の暴落、預金封鎖は現実味が薄いですが、少しずつ、本当に少しずつ、年金の抑制、社会保障(医療・介護費)の負担増、行政サービスの低下や有料化はありうるのかな・・・程度には思っています。

あ、あと、消費税の引き上げですね。

しょうがないけれど社会の持続性を考えたら受け入れられる。

そういう程度で財政再建や社会保障改革が進む気がします。

雑感でした。

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日銀の新たな政策の枠組み イールドカーブを政策の目標に思うこと

本日の大注目、日銀の金融政策決定会合が終わりました。

正直なところ日銀も手詰まりになっているのかなと感じました。

今回は、日本の銀行の手詰まり感について


日銀の意図するところを忖度すると


日銀は、イールドカーブ(利回り曲線)の形状を政策のターゲットにします。

どこまでコントロールできるか技術的なところは疑問が残りますが、イールドカーブの形状を政策のターゲットにすること自体は違和感はありません。

長短スプレッドが大きい方が銀行の収益には追い風です。

今回の日銀の措置は、銀行経営に配慮したものと私は思います。


単純化して考えると


市中銀行の立場で単純化して考えます。

1. 預金の金利と国債の利回りの差が、銀行の利ザヤA
2. 預金の金利と企業向け融資の差が、銀行の利ザヤB

国債は信用力が最上なので同じ期間(たとえば1年)なら、「融資金利」>「国債利回り」になります。そこで、銀行は国債で利回りを稼ぐときは通常は長期国債を保有して期間のリスクを取ります。

市中銀行にとっては、期間のリスク(金利リスク)を取って利ザヤAを狙うか、信用リスクを取って利ザヤBを狙うかの組み合わせです。


これまでの日銀


これまで日銀は、量的緩和で債券を爆買いして長期金利を低下させてきました。イールドカーブを潰してフラット化させたわけです。

その狙いは、利ザヤAがつぶれていく事で、銀行の行動を利ザヤBに仕向けることでした。
[参考過去記事]

ただ、それも限界が来てますね。

今回の措置は行き過ぎたフラット化を修正する意図があるのでしょう。

日銀の資料にも以下の言及があります。[資料]

"イールドカーブの過度な低下、フラット化は、広い意味での金融機能の持続性に対する不安感をもたらし、マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性がある。"



これまでの市中銀行の行動


市中銀行は融資を増やしてきました。

しかし、このところは伸び率が鈍化しています。融資の前年比です。

小黒とら


銀行が融資を伸ばしにくくなっている一方で、預金は増える一方です。預金の前年比です。

小黒とら

どちらも日銀のサイトからデータを取りました。

この傾向から思うに、この先、利ザヤBを伸ばしにくくなると思われます。単純に考えて銀行経営はしばらく厳しくなるでしょう。

そこで、日銀は利ザヤAに配慮することになったのかな、という気がします。


まとめ、のようなもの


私は今回の措置で日銀の手詰まり感と微妙な軌道修正を感じました。

日銀は物価の安定(安定的にインフレ率2%)も目標ですが、もう一つの目標である「金融システムの安定」に軸足を移したのかな、というのが第一感です。

金融論は複雑なので、私の見方がどのくらい妥当性があるかは議論の余地ありでしょう。

いろんな見方、いろんな意見があってしかるべきです。(^^)

過去記事
なぜ日銀は国債を購入するの? ポートフォリオ・リバランス効果について
2025年には地銀の大半が赤字経営 金融庁の試算に思うこと

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各国で予想外の利下げが続いています

このところ米国株の強さが際立ってますね。

消去法的に米国株という気がしなくもないです。米国株だけを見ていると相場は堅調ですが、そういうときこそ世界に目を向けようと思います。

今回は、予想外の利下げについて


予想外の利下げ


わりと前からですが、気になるニュースに「予想外の利下げ」という表現があります。あと、予想外ではない普通の利下げもあります。

具体的に見ていきましょう。

2016年7月13日
マレーシアの中央銀行が予想外の利下げ。利下げは7年ぶり。
3.25% → 3.00%

2016年6月16日
インドネシアの中央銀行が利下げ。今年4回目。
6.75% → 6.50%

2016年6月10日
ロシアの中央銀行が利下げ。利下げは2015年8月以来。
11.00% → 10.50%

2016年6月9日
韓国の中央銀行が予想外の利下げ。利下げは2015年6月以来。
1.50% → 1.25%(過去最低水準)

2016年5月24日
トルコの中央銀行が利下げ。3か月連続。
10.00% → 9.50%

2016年5月3日
オーストラリアの中央銀行が予想外の利下げ。利下げは2015年5月以来。
2.00% → 1.75%(過去最低水準)

2016年3月10日
ニュージーランドの中央銀行が予想外の利下げ。
2.50% → 2.25%(過去最低水準)


インフレ圧力の低下


新興国が利下げに踏み切っているのは、経済の成長率が減速気味というのもありますし、インフレ懸念が高まっていないという点もあります。

米国の利上げピッチが緩やかになるだろうという思惑から、新興国通貨安が進んでいないんです。だからわりと利下げがしやすいんですね。

タイもそのうち利下げしそうです。

あ、

FXをやってるわけじゃないです。(^^;


なんとなく気だるい雰囲気


なんとなくですが、このところの世界の株式市場は気だるい感じです。

もちろん米国株は調子いいんですけどね。

そのわりには、なんだかそれほどの情熱もなく米国株が上昇している感じです。積極的に買われているというよりは、他の国がパッとしないので相対的に米国がメリットを受けているのかなと見ています。

それはやはり、世界のマクロ景気が減速気味だからかな・・・と。


こんなときの投資戦略


いつものことですが様子見です。

いまはコアな部分しか投資していないので、だいぶお気楽に相場を見ています。

上がれば上がったでコアな部分で利益は出ますし、
下がったら下がったで買うチャンスを見極める楽しさも出てきます。

いまから買うチャンスを待ち構えていると、ずっと待ちぼうけを食らわされるかもしれませんが、まあ、それでもいいかなと思ってます。

休むも相場、待つも相場ですから。

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お金を回していないのは? 麻生財務大臣の発言で考えたこと

麻生財務大臣の90歳で老後が心配と言っている高齢者を取り上げた発言について、以前に記事を書きました。今回はそれの続きです。

いくつになっても老後には不安が付きまとうのですが、今回のテーマは社会保障や年金、高齢者福祉といった点ではなく、純粋に、日本経済の動脈硬化を招いている要素はどこかを考えます。

今回は、GDPの構成要素から日本経済の目詰まりを見ていきます。


GDPの構成要素


日本の名目GDPは約500兆円です。[参照:内閣府]

ざっくり言うと、GDPは次の構成要素からなります。

1. 民間最終消費支出
2. 民間住宅投資
3. 民間企業設備投資
4. 政府最終消費支出
5. 公的固定資本形成

主な要素で見たいので在庫と純輸出は除きました。

で、長期的なデータを見るのに国連のデータを使いました。[出典]

国連のデータでは、
a. Household consumption expenditure
b. General government final consumption expenditure
c. Gross capital formation

という構成要素になります。

a=1(消費)
b=4(政府)
c=2+3+5(投資)

という対応です。

投資に住宅投資も、企業の設備投資も、政府の公共投資も入ってます。


さて、長期的な傾向


長期的な傾向を見ていきましょう。

まずは、GDPの推移です。

GDP 小黒とら

500兆円近辺で横ばいですね。

では、構成要素で見ていきましょう。


家計消費


家計消費(Household consumption expenditure)

GDP 小黒とら

安定的な横這いですね。


政府支出


政府支出(General government final consumption expenditure)

GDP 小黒とら

こちらは右肩上がりです。

政府の支出増加がGDPを支えている構図とも言えます。


投資


投資(Gross capital formation)

GDP 小黒とら

こちらは残念な結果です。

90年以降、右肩下がりですね。

政府が公共投資を抑えているのもありますし、民間企業が設備投資を国内で行わなくなっているのも影響しています。

日本経済の目詰まり感の一因は、ここにあると私は思っています。


日本経済の目詰まり感


GDPの構成要素を見てみると、ピーク時から50兆円も減っている「投資」をどうにかする必要があるでしょう。

国内でもっと投資を促す政策です。

もっとも、国内で投資するなら工場を立てて労働集約的な事業をするのではなく、人工知能(AI)などの先端テクノロジーの研究・開発のための投資になるんでしょうね。投資に値するアイデアと人材がたくさん揃っていれば投資もたくさん起きるはず。そのための政策はもっと必要でしょう。

教育、アイデア、若者、新規事業、イノベーションといった部分にもっとお金が回るといいなと思います。

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