カテゴリ:読書感想文 の記事一覧

弱者の理解力に社会が合わせるべきか

おもしろい本を読みました。

中島義道氏の「善人ほど悪い奴はいない」という本です。

今回は、この読書感想文です。


弱者の定義


社会には強者もいれば弱者もいます。

本では、弱者を「自分が弱いことを骨の髄まで自覚しているが、それに自責の念を覚えるのでもなく、むしろ自分が弱いことを全身で『正当化』する人」と定義しています。


弱者ゆえの価値転換


弱者の中には次のように考える人が出てくるそうです。

「自分は、弱いけれど正しい。」

強さや弱さと、正しいと思うことは別問題なので特に違和感はなかったのですが、本では自分を保つための自己欺瞞としてこのロジックを用いています。

さて、ここかさらに進みます。大掛かりな価値転換です。

「自分は弱いけれど正しいのではない。自分は弱いがゆえに正しいのだ!」

と。

この価値転換は考えさせられますね。


社会の弱体化


本を読んでいてなるほどと思ったところを引用します。

私は弱者なんだから、みんなが理解していることが理解できなくとも、思わぬ過失をして大損失しても「しかたない」とはならない。そうではなく、弱者の理解力に合わせて、弱者がいかなる損失も被らないような「思いやりのある」社会を実現しなければならないのだ。つまり、自分ら弱者に社会全体が「合わせるべきだ!」と大声で訴えるのである。


著者の中島氏は続けて、「こうすることによって、彼(女)は社会全体を弱体化することを目指す」と述べています。

なるほど・・・

弱いがゆえに正しいと価値転換し、弱さを正当化し、弱者の理解力に社会が合わせるべきと主張する。しかしそれは、社会全体を弱体化させる。

ということですね。


思うこと


弱者に社会全体が合わせるべきだ。

そう大声で訴える人は一部の人だと思います。

社会のあり方と個人の努力のバランスですね。弱者を自称する人に優しい政策は、必ずしも社会全体の利益にならないでしょう。本にあった社会全体を弱体化させるという視点も重要だと思いました。


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怠ける権利

マルクス経済学のカール・マルクスの娘婿にポール・ラファルグという人物がいます。

そのポール・ラファルグのエッセイに「怠ける権利」があります。そこでは資本主義社会の労働について、奴隷的で、効率を至上とする過労を招くと指摘しています。[参照]

1880年のことです。130年前からあまり変わってないですね。 (-_-;

今回は、「『その日暮らし』の人類学」の読書感想文です。


話のネタ元


冒頭のポール・ラファルグの「怠ける権利」ですが、それを知ったのは「『その日暮らし』の人類学」(小川さやか著)を読んだからです。

小川さやか氏は文化人類学者です。

文化人類学とは、私たちとは違う生き方と、それを支える知恵や仕組み、人間関係を明らかにする学問です。興味深いのは学問としての手法です。引用します。

わたしたちの社会や文化、経済それ自体を直接的に評価・批判するよりも、異なる論理・しかたで確かに動いている世界を開示することで、私たちの社会や文化を逆照射し、自問させるという少々回りくどい手法を採る学問ともいえる。


私たちとは違う社会、文化、価値観を学ぶことで、いまの私たちの社会、文化、価値観を見直すことができます。

私はこういうアプローチは大好きです。

知らない世界を知ることで視野が広がっていくのは楽しいですし、自分の価値観に凝り固まるのを防ぐこともできます。


その日暮らし


本の主題は「その日暮らし」です。

明日のこと、将来のことはさておき、その日、その日、いまを生きる生き方をしている社会を取り上げています。具体的にはタンザニアです。

個人や零細のタンザニア人が、中国に買い出しに出かけて自国に戻って商品を売る話があります。先進国では「契約」にもとづく取引ですが、タンザニア人と中国人の間では契約は意味を成さず、知り合いの知り合いで行きついた相手との「信頼」にもとづいて取引が行われます。

信頼とはいえ裏切りはあるわけですし、契約違反による損害賠償は期待できないため、取引は少量が基本です。先進国のように大量一括発注はできないですし、現物を見ないと恐いので電話での注文もしません。

で、それを非効率と思うのは先進国の視点ですね。

本を読んでいくとアフリカでは先進国の商慣習とはまったく異なる知恵、しくみで経済が動いていることがわかります。


均質的な時間


日本を含めてだいたいの先進国では、明日のため、未来のために、いまを犠牲にしている面がある、と文化人類学者はとらえることが多いそうです。

その背景として、先進国では社会は安定し、今日の延長線上に明日があり、明日の延長線上に明後日があり・・・と、均質的な時間の流れを想定できるからです。なので、将来のために長期的な計画が立てられます。

人生もビジネスも。

ところがタンザニアのような国では、今日と明日は違う日で、明後日には何が起きているかわかりません。その日、その時にできる仕事を臨機応変にこなす生き方になります。

本書からの引用では「不均質な時の流れにおいて、機が熟するのを辛抱強く待ち、熟した好機を的確に捉える」ことになります。


思うこと


均質的な時間を想定して、将来のために長期的な計画を立てる。
そういう生き方は、将来に得られる果実は大きいでしょうが、将来のためにいまを犠牲にするという側面もありますね。

不均質な時間を想定して、その日その日、その瞬間に生きる。
そういう生き方は、いまを生きますが、効率性、生産性は低く、物質的豊かさは犠牲になるかもしれませんね。

そんなことを思いつつ・・・

人生の局面において、常にどちらかでいる必要はないんでしょうね。

若いころは長期的な人生設計も考えます。で、ある程度の年齢に至ったら、そこからは将来(老後)の計画は考え過ぎず、その日暮らし的な考え方に少しずつ軌道修正してもいいのかなと思います。

人生、なるようにしかならないですし、大抵のことは何とかなるでしょう。

怠ける権利はさておき
その日その日をゆっくり生きる時間の使い方をしたいなと思います。(^^)

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ツリーハウスの本2冊で 日本とフランスの違いを感じました

ツリーハウスに関する本を2つ読みました。

「ツリーハウスをつくる愉しみ」
「ツリーハウスで夢をみる」

絵本のように楽しめる本でした。

今回は、ツリーハウスの本の読書感想文です。


ツリーハウスをつくる愉しみ


小林崇氏の2012年の本です。

ネスカフェのCMで使われたツリーハウスも載っていました。

ミノムシみたいなツリーハウスです。

tree-house-3.jpg
画像出典

「ゲゲゲの鬼太郎」の家を思い浮かべますね。

小林崇氏も本の中で、日本における樹上の家(ツリーハウス)の原点は「ゲゲゲの鬼太郎」と書いています。

鬼太郎の作者、水木しげる氏は太平洋戦争で東南アジアに行っています。そこで見た樹上生活が鬼太郎の家のもとになっているのではないか、と小林崇氏は述べています。

鬼太郎の家はいいですね。


ツリーハウスで夢をみる


こちらはフランス人の本です。

アラン ロラン、ギスラン アンドレ、ダニエル デュフールの3氏です。

ツリーハウス専門の建築工房の作品集です。しっかり設計されて、しっかり作られたツリーハウスばかりだなーという印象です。

手作り感や自然な感じは少ないですが、住むにはこっちの方が快適そうです。


雑感


小林氏の作品は自然な感じが多いです。

歪みや曲線、不揃いな素材が取り入れられているからですね。もちろん小林氏のツリーハウスでもきっちり直線形の小屋もありますが、そればかりではないです。

一方、アラン ロラン氏らの作品は、ちゃんと住める家として機能性は高そうです。壁も屋根も揃った素材ですし、螺旋階段はきれいな曲線です。ただ、素材そのまま、不揃いのままというのは見当たらないです。

両者の違いは興味深いです。

よく言われるのは自然と調和する日本人と、自然と対峙する西洋人という対比ですね。

ん・・・

そういう違いは無きにしも非ずかなーと思いました。

思わぬところで日本と西洋の違いを感じてしまいました。(^^)


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アラジンと魔法のランプ アラジンは中国人?

アラビアンナイトの本を読んでます。

意外な発見があって面白いです。

アラビアンナイト(千夜一夜物語)には有名な話も多く、「アラジンと魔法のランプ」、「シンドバッドの冒険」、「アリババと40人の盗賊」などがあります。

ところが、オリジナルのアラビア語版は282の話しかなく、これら有名な話は入っていないそうです。

ちなみにアラビアンナイトは、サーサーン朝ペルシア(226年 - 651年)時代に生まれました。日本だと弥生時代、卑弥呼の没年(248年)から、飛鳥時代、646年の大化の改新あたりに重なります。


アラジンと魔法のランプ


当初版には登場しないアラジンですが、まあそれはそれとして話を進めましょう。

いま読んでいる本では

「今は昔、中国のある町にアラジンという少年がいた。父親のムスタファは仕立屋をしていたが、息子のアラジンは遊んでばかりで、一向に家業を継ごうとはしない」

というところからスタートします。

で、アラジンに魔法使いが近づく様子を描いた挿絵

936_araddin_01.png
(本から引用)

なにかとエキゾチックな風景ですね。

私が思っているアラジンとイメージがだいぶ違います。

それに、魔法使いの履いているのは下駄でしょうか。(´゚д゚`)


挿絵を見ているだけでも


今回読んでいるのは挿絵が豊富な本です。

もうひとつ挿絵をご紹介します。

936_araddin_02.png
(本から引用)

幻想的な挿絵ですね。

オリエンタリズムに憧れを持つ西洋人が描いた挿絵だから、幻想的で異国情緒満載なのかもしれません。

読んでも見ても楽しめる本です。


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ヒアリと、よく分からないものへのリスクの見積もりについて

連日「ヒアリ」がニュースになってますね。

特定外来生物なので日本の生態系への影響は心配です。ただ、人に対する危険性という点では、それほど恐れることもないように思えます。

今回は、リスクの見積もりについての読書感想文です。


リスクに関する本


今回取り上げるのは「リスク・リテラシーが身につく統計的思考法」です。

著者はゲルト・ギーゲレンツァー(Gerd Gigerenzer)氏。

意思決定における限定合理性やヒューリスティックを専門とする心理学者です。リスク評価やベイズ推定などを取り扱っていて、心理学的にも行動経済学(認知バイアス)として読んでも面白いです。


危険性の評価


人は、未知の危険性を過大評価するそうです。

よく分からないものは怖いという心理が働くんですね。

飲酒の危険性よりも、遺伝子工学の危険性を大きく評価します。飲酒による依存症、人格破壊、事故などによる社会的損失が大きいにも関わらず、飲酒の影響度はだいたい知られているから人は安心できます。

遺伝子工学はどうでしょう。

リスクがよく分からないですね。もしかしたら、遺伝子組換え食品を食べたことによって体に影響が出るかもしれません。いますぐか、10年後か、20年後か。あるいはまったく影響がないかも。

よく分からないからリスクは大きめに見積もっておく。その心理は理解できますね。


投資の世界でも


ちょっとわき道にそれて投資について考えます。

市場参加者は、大型株は分かっている(つもり)。小型株はよく分からない。

小型株の方がリスクプレミアムが厚い理由の一つに、心理的な要素もありそうです。

大型株と小型株では、市場の流動性や事業リスクの大きさ自体が違うので、その点でリスクプレミアムに違いはあります。ただ、それ以外にも、分かっている(つもり)の企業であるか、知る人ぞ知る企業なのかといった違いもありそうだなと思います。


思うこと


話をリスクの見積もりに戻しましょう。ヒアリをどこまで恐れる必要があるのか。

危険性がよく分からないので、いまのところリスクを大きめに見積もっているだけかもしれません。

油断はいけませんが、騒ぎすぎるのもいけないですよね。

本を読んで思うのは、リスクや危険性の見積もりって案外難しいということです。特に、よく分からないものは不安心理からリスクを過大に見積もってしまいます。ヒアリもそうですし、老後の不安もそうですよね。

老後の不安についてですが、「備えあれば憂いなし」なんでしょうけど

「憂いなし」になるための「備え」がどのくらい必要か。それが分からないから不安は尽きないのかもしれませんね。

経済学的な問題でもあり、心理学的な問題でもありますね。


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内容は高度ですが、読みやすいです。

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