カテゴリ:投資や投機や貯蓄について の記事一覧

日経の「テーマ型投信、どう付き合う?」に思うこと

テーマ型投信は評判悪いですね。

テーマ型、毎月分配型、多階建て投信は批判の対象になりやすいです。テーマ型で通貨選択型にしてカバードコールをつけて毎月分配にしたら、まず批判されるでしょうね。

理由はコストが高いとか、回転売買の材料にされるといったものです。投資信託が個人の長期的な資産形成に資することなく、金融機関の手数料稼ぎに使われる、というのが大方の理由でしょう。

今回は、個人の長期的な資産形成に資する投資信託についての雑感です。


テーマ型は長期投資に向かない?


日経ウェブに「テーマ型投信、どう付き合う?」という記事がありました。[外部記事]

検討したい点はいくつかあるのですが、今回は、テーマ型投信が長期投資に向かないという論調を取り上げます。日経は「金融庁はテーマ型投信のブームには警鐘を鳴らしている」としています。

金融庁が警鐘を鳴らす理由を整理すると、

1. テーマ型投信は中長期で保有し続けるよりは、旬を見極め短期間で売買益を確保することが重要なため、個人投資家には適さない。
2. テーマを追い掛け、投信を乗り換えさせる売り方に使われる。

となります。さて、どうでしょう。


論点整理


テーマ型投信の論点として、

1.テーマの持続性や優位性といったファンドの本質的な問題と、
2.金融機関の手数料稼ぎの道具になっている

という、次元の異なる問題をごっちゃに論じているので分かりにくいです。

で、論点を分かりやすくするために、1ファンドの問題と、2販売側のスタンスとを分けて考えましょう。


長期的な投資に向く投信とは?


まずファンドの問題です。

私が強い違和感を持つのは、長期的な投資に向く投信とは何かを定めないままに、テーマ型投信を販売側の視点で「短期売買に適する商品」としている点です。

長期的な投資に向く投信とはどういうものか。テーマ型投信はなぜ、投資する視点で長期的な投資に向かないと言えるのか。

その点の整理がないです。

次に販売側のスタンスを考えます。

現実的な姿として、販売側としては、インデックス投信の回転売買をすすめる販売員はいないでしょう。しかし、テーマ型は回転売買させやすいという現実はありますね。

その点に問題がありそうです。


テーマ型が長期投資に向かないというのは


どうやら、テーマ型が長期投資に向かないというのは、ファンドに内在する本質的な問題ではなく、

・販売会社が短期売買のツールとしているから
・投資家がそれに乗っているから

という点を反映させた論調に過ぎない気がします。

実際、テーマ型でも、日経で取り上げられた「グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド」は、長期的に保有していて報われたファンドです。

ファンドの問題ではなく、販売側と投資家のスタンスの問題として整理すべきですね。


思うこと1


テーマ型投信を金融庁が問題視しているとして、そのポイントは販売会社と投資家側にあるように思えます。ファンドの問題なのか、販売会社と投資家のスタンスの問題なのか、そこは分けて論じたいですね。

で、ファンドの問題を論じるなら、長期的な投資に向く投信とは何かを定めるところから始めるべきでしょう。


思うこと2


テーマ型投信をことさら擁護するわけではないのですが、

坊主憎けりゃ袈裟まで憎い
販売会社のスタンスが気に食わなければファンドも気に食わない

に陥ることなく、

坊主を憎んで袈裟を憎まず

で行きたいものです。(^^)

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運用コストは資産形成の一つの要素 唯一、最優先の要素ではなくて

投資の基本として、ドルコスト平均法の積立投資を長期的に、運用コストの低い投資信託で行うことが推奨されます。

積立投資、長期的、低コストです。

一般的な投資指南本はそうですし、金融庁が主導する積立NISAはまさにこの理念を具現化する制度です。

で、今回は低コストについて


基本的な考え方


低コストはいいことです。これが基本的な考え方です。

ただし、「コストが低いほうがいい」となると条件付きです。

(ほぼ)同じものであれば、コストが低いほうがいい。

です。

TOPIXをベンチマークとするインデックスファンドは、ほぼ同じものと考えていいでしょう。トラッキングエラーの大小の違いはあるにしても、どのファンドを選んでもポートフォリオの中身はほぼ同じです。

だから同じ指数にトラックするインデックスファンドならば、信託報酬が低いほうがいい。

ですね。


違うものなら


ところが、違うものなら、信託報酬が低いほうがいいとは言い切れなくなります。

バランス型ファンドでは組み入れる資産も違いますし、資産配分も異なります。それぞれのファンドではリスクリターン特性が異なります。

そのため運用コストは判断材料の一つにはなりますが、唯一、あるいは最優先の判断材料にはなりません。

具体的に見てみましょう。


信託報酬とリターンの関係


モーニングスターからデータを取りました。

小黒とら

過去5年(2002年3月末~2017年3月末)です。446ファンドあります。

横軸は実質の信託報酬料率、縦軸はトータルリターンです。どちらも年率。

トータルリターンは基準価額にもとづいていますので信託報酬控除後です。コストとトータルリターンには関係性が見られません。

信託報酬が低いほうがいいとは言い切れない結果です。


資産形成をするということ


実際のところ、資産運用というのは、資産クラスの中でアクティブにするかインデックスにするかという点よりも、どういうポートフォリオを作るかという点が大きいでしょう。

バランス型ファンドはポートフォリオの例です。たくさんのファンドを見ることで、リターンとリスク、コストの関係を見ることができます。

そこでコストとリターン関係ですが、先ほどの図のようにコストが低ければいいというものではないことが分かります。

あ、

大事なことなので念を押しますが、「コストが低ければいいというものではない」と言っているだけです。「コストが低いのがダメ」とも、「コストが高いのがいい」とも言っているわけではありません。

端的に言うと、コストが低ければいいという考えでは不十分。

という論点です。


リターンとリスク


先ほどの図ではコストとトータルリターンに関係性は見られませんでした。

小黒とら

こちらは関係性が見られます。

横軸は標準偏差(リスク)です。概ねハイリスク・ハイリターンの関係ですね。

資産運用で大切なのは、どのくらいのリスクを取ってどのくらいのリターンを狙うかの目算だと思うのです。


まとめ、のようなもの


今回は運用コストについて見てみました。運用コストは資産形成の一つの要素ですね。リターンを減じるので軽んじることはできません。

しかし、一つの要素であって、唯一の要素ではないですし、最優先すべき要素でもないと思います。

それは最初の図を見れば明らかです。運用コストとリターンには関連性は見られません。この結果から考えたいのは、コストが低ければ良いという考えで十分なのかという点です。

最近目にした記事では、手数料が○%以上のものは最初から投資の対象外にしましょうというのがあって、それはちょっと極論だなと思いました。

極論のほうが浸透しやすいですけどね。

人は自分で考えるより、他人から与えられる分かりやすい答えを受け入れたがります。論点や根拠を吟味しながら考えていくのは手間がかかるからです。

ただ、そうするしか自分の考えにはならないですよね。

手数料とリターン、リスク、資産形成をどう考えるか。

それは人それぞれ。自分の考えを持つことが大事だと思います。

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積立投資をしてよかったという回答に思うこと

日経電子版に積立NISAの記事がありました。[外部記事]

「積立NISAを先読み調査 収益重視ならリスク高め投信」という記事です。

今回は、積立投資について


積立NISAの記事


日経電子版にあった図を引用します。

日経電子版
画像出典

日経電子版の記事の趣旨は、ハイリスク型の投資とローリスク型の投資との比較です。

ただ、ちょっと気になったのは以下です。

 積立投資をした感想として回答者数824人のうち67.2%が「積立投資をしてよかった」と答え、「やらなければよかった」はわずか1.7%にとどまった。

 感想には「もっと早い時期から始めておけばよかった」「毎月継続することで、時間分散によって思っていたよりリスクは小さい」など、ポジティブな回答が多い。


さて、どうでしょう。


再検証


日経電子版の左図を再構築しました。

積立投資 小黒とら

縦と横のバランスが違うのですが、同じ図です。2007年3月末を10,000としています。(日経は100ですが)

10年くらい続けている人なら、いまのところだいぶ余裕のある含み益ですね。


投資時期を変えると


では、アベノミクス相場から投資を始めた人はどうでしょう。

3年前、2014年3月末から投資を始めたとしましょう。

積立投資 小黒とら

オレンジ色が3年前から積立投資をした人。
緑色は10年前から始めた人です。

株価下落に対する余裕度はだいぶ違いますね。


思こと


日経電子版にあった積立投資にポジティブな回答は、そのままでは受け取りにくいです。

回答者の中にはリーマンショックを耐え抜いた人が多く、ある意味では「サバイバーシップバイアス」があるかもしれないからです。

緑色の状況の人と、オレンジ色の人とでは積立投資の感じ方は違うでしょう。

それと、相場の状況も注意したいですね。

含み益の人はポジティブに評価するでしょう。含み損の人だらけのリーマンショックのときにアンケートを取ると回答はまた違ったものになるでしょうね。


思うこと2


積立投資は投資手法の一つです。

私はその手法が特に優れているとも、特に劣っているとも思っていません。

積立投資は買付時期を分散できるので購入単価を平準化しやすいのは特性の一つ。購入単価はゆっくりとしか変化しないので高値圏で始めると苦しむ時期が意外と長い、ってのも特性の一つです。

大事なのは、手法の特性を理解することですね。

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投資に失敗する強気 過度な成長期待

前回記事「投資に失敗する強気」の続きです。

図らずも連載物になってます。

今回は、強気相場での成長期待の織り込みについて


とら焼き製造会社と総合和菓子メーカー


総合和菓子メーカーのW社が、とら焼き製造会社のT社を買収する例を前回出しました。

とら焼き製造のT社のブランド力、特許、ノウハウなどの「のれん代」を1500億円として買収価格を1700億円とした例です。

前回はブランド力などの1500億円の根拠をぼやかしました。今回はその点を考えます。


T社の利益


いま世界ではとら焼きブームが起きています。

特にアジアでは和菓子が空前のブームです。なかでもとら焼きは大人気で売り上げは倍々ゲームで伸びています。

そこで総合和菓子メーカーのW社はT社に目を付けたわけです。

W社はこう考えました

T社の来年の利益は20億円。
来年を含めて今後10年は毎年20%のペースで増えていくだろう。
しかし、11年目からは安定成長で年2%と見ておこう。

で、T社を買収する案件はもちろんリスクもあるから、この買収での投資リターンは年6%欲しい。

さて、この条件での企業価値は・・・

1820億円になります。


W社の思惑


1820億円の計算はインカムアプローチ(DCF法)を使いました。

将来の利益を予想して、要求リターンの6%で割り戻して求めます。それ以上の説明は今回は省きます。

ともかく、将来の利益を見積もって1800億円くらい。なので、T社のブランド力などの「のれん代」を1500億円として評価した企業価値1700億円と整合的です。

実際のM&Aはインカムアプローチと、のれん代の評価積み上げ方式、類似会社の買収事例などを比較して、エンピツを舐めて寄せていくんでしょうけど。

ともかく、T社の企業価値を1700億円としましょう。


利益成長が激減


さて、T社の利益です。

買収してすぐに世界景気の減速でアジアの消費が激減したとします。

当初期待していた利益成長の年20%は絶望的です。まあそれでもこの先10年は10%の利益成長は見込めそうです。11年目からは従来予想通り2%の成長で変わりません。

要求リターンの年6%は変わらないとして

10年間の利益成長が20%→10%になったT社の企業価値を再評価しましょう。

さて、いくらになるか。


T社の再評価


T社の企業価値を再評価すると

895億円です。

企業価値は50.8%ダウンです。


株式投資でも同じこと


高い成長率を前提にして高い株価となっている銘柄がります。成長株にありがちですね。

そうでなくても、市場全体が織り込んでいる利益成長率が高くて、市場全体の株価が高くなっていることもあります。バブル期などはそうですね。

で、利益成長に対する市場の評価が変われば、たとえプラスの成長でも株価は下がることがあります。

悩ましいのは、市場の評価がどう変わるかは的確につかめませんし、利益成長だけでなく割引率の変化も的確にはつかめないことですね。


それでも


的確にはつかめないのですが、それでもざっくりとした考え方です。

景気減速や企業業績の悪化を示すニュースが増えて、投資家が企業の利益成長に慎重になる。

そうすると株価は下がりやすいです。

逆に、企業の業績がこの先しばらく上向きそうだ、成長が加速しそうだというニュースが増えて投資家の期待が上向きに変化する。

そうすると株価は上がりやすいですね。

私は、ここ数年はわりと強気の投資家が増えて、利益成長も比較的楽観だった。その上でいまの株価だろうという見方です。なので、しばらくは慎重に見た方がいいかなという思いです。

今日明日の話というよりは、数年の期間を想定しての見方です。

あ、

数十年という期間を想定した見方でもありません。(^^;

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投資に失敗する強気

東芝 日本郵政 キリンHD 海外企業の買収による巨額損失に思うこと」の続きです。

今回は、買収や投資に失敗する強気について


とら焼き製造会社


かなり単純化した貸借対照表です。

858_MandA_01.png

この企業の企業価値を求めましょう。話を単純化するために、企業価値とはその企業の純資産価値(総資産から負債を引いた額)とします。

この企業は、とら焼きを製造しているT社とします。

T社には現預金で100億円、とら焼き工場として400億円の資産があります。一方、銀行から運転資金として300億円の借入れがあります。

T社の純資産額 = 企業価値は、(100+400)- 300 = 200億円です。


総合和菓子メーカー


さて、T社とは別の企業で、総合和菓子メーカーのW社があります。

W社は自社のラインナップにとら焼きを入れたい。しかし、W社にはとら焼きを作る工場はありませんし、作るためのノウハウもありません。また、T社のとら焼きは市場に浸透していて今からW社が新たにとら焼き市場に入っていくも大変です。

和菓子メーカーのW社は、とら焼きのT社を丸ごと手に入れちゃうのが手っ取り早いと考えました。

で、実際に買おうとしたとき、先ほどの企業価値200億円では買えません。


被買収側の企業価値


ここで登場するのが、企業が持っている目に見えない資産です。

T社では、とら焼きを作るノウハウです。製造に関する特許も持っています。しかも市場シェアも高く、T社のとら焼きにはブランド力もあります。

となると、買収するW社は買収対象のT社のブランド力、特許、ノウハウなども資産価値として評価しないと取引が成功しませんね。

ブランド力、特許、ノウハウを考慮に入れるとこうなります。

858_MandA_02.png

こうなるとT社の企業価値は1700億円に跳ね上がります。


どうやって見積もる?


ブランド力が500億円、特許の価値が500億円、ノウハウが500億円をどうやって決めるか。

そこには複雑な要素が絡むでしょう。

特に買収が競合しているとき、どうしても買いたいと思えば、ブランド価値や特許の価値を高く見積もって買収額を高くすることになります。

買収(M&A)では「勝者の呪い」(Winner's curse)という言葉もありますね。


失敗のメカニズム


T社の企業価値を高く見積もったものの・・・

世界的な景気低迷で思ったほどとら焼きの消費量が増えないとか、成長を見込んだアジア各国のとら焼きブームが一過性で終わってしまったとか。

そうなると、

ブランド力が500億円、特許の価値が500億円、ノウハウが500億円って、うわっ、この見積もり高すぎ!となりますね。

再評価したところ、ブランド、特許、ノウハウの3つ合わせて500億円となったら1000億円が吹っ飛ぶことになります。

減損処理です。


M&Aが活発


さて、ここで興味深いグラフがあります。M&Aの金額です。単位は億円。

1_number.png
出典:MARR Online)

2011年以降、企業の合併・買収(M&A)が増えています。

景気回復期に伴い → 企業買収が活発化 → 景気のピークアウト → 高値で買収してしまった案件の減損処理

という流れの後半に差し掛かっているのかもしれません。

M&Aが活発なときは企業価値を高く評価しがちです。株式投資が活発なときにバリュエーションが割高になるのに似ていますね。


思うこと


M&Aが増えた数年後、減損処理が増える。

そんな気がしています。

企業の減損処理が増えると株価には良くないですね。

去年から株価は高値圏かなと思っていたのですが、このところは企業業績の不透明さも強まっている気がします。

のんびり様子見が吉かもしれませんね。

続編:投資に失敗する強気 過度な成長期待

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