投資の勘違い 株式投資と企業の成長について

日経を読んでいたら、「投資は悪いことなのか 日本人の大いなる誤解を解く」という記事がありました。[外部記事]

投資に関する悪いイメージを払拭したいという思いだと読み取りました。
ただ、別の誤解を生む恐れが・・・

今回は、投資に関する誤解について


投資の勘違い


引用した記事に限らないのですが、以下のような説明をよく見かけます。

あなたがどこかの企業に投資をしたとします。その企業は得られたお金を元手に新たな事業を展開します。


とあって、

その企業が商品開発を行い、今まで世の中になかった素晴らしい商品が誕生することになれば、世界はより豊かになります。


と続き、

投資を通じて世の中が豊かになる手伝いをしたことで、最終的にあなたの懐も豊かにすることになるわけです。


と結びます。

さて、どうでしょう。実はここに大きな誤解が潜んでいます。


株式投資とは


トヨタ自動車の株式を買うとします。

株式投資ですね。

さて、私がトヨタに投資したときのお金の流れはどうなるでしょう。簡略化するとこうなります。

通常の株式投資

958_secondary.png


通常は既に出回っている株券を証券会社経由で購入します(株券は電子化されていますので比喩的に)

私は、お金を払って株券を手に入れます。私が払ったお金は、トヨタ自動車にではなく、私に株券を売った人に渡ります。

実際には、売買当事者の間に決済機構が入りますので直接の関係ではありません。ただ、実質的なお金の移動と株券の移動を考えると、そこにトヨタ自動車は介在しないです。


流通市場


既に市場に出回っている株式を売買する市場は、流通市場(セカンダリーマーケット)と呼ばれます。

ほとんどの取引は流通市場での取引です。

その場合、株券とお金は、投資家の間をぐるぐる回ってます。

私がどこかの企業の株式に投資したとします。その企業は得られたお金を元手に新たな事業を・・・とはいきません。


発行市場


ところで、企業はまれに公募増資などを行います。

新株発行による資金調達です。

その増資に応じて株式を取得する場合なら、投資家のお金は企業に回ります。図にするとこうなります。

958_primary.png


こういう取引なら、その企業は得られたお金を元手に新たな事業を・・・となります。企業が新株を発行して資金調達する市場は、発行市場(プライマリーマーケット)と呼ばれます。

流通市場と発行市場の違い、結構大事ですね。


イメージ先行にご注意


株式投資のイメージアップのためでしょうけど

1. 企業に投資をする。
2. 投資によって、企業は資金を得て新たな事業を展開する。
3. 新たな事業によって、世界はより豊かになる。
4. 世界が豊かになることで、投資した人も潤う。

というロジックには注意が必要です。

1→2 に至るプロセスをよくよく考えないといけません。


思うこと


株式や投資信託に投資したお金は、最終的にどこに行くのか。

増資に応じるなら、企業に行きます。
既に流通している株式を購入するなら、株式を売った投資家に行きます。

投資を通じて世界経済が豊かになり、それによって投資家も潤うのは夢があります。きれいなストーリーだけに水を差すのは野暮なんですけど・・・

「日本人の大いなる誤解を解く」と題する記事にしては、別の誤解を与えるのではないかなーと危惧しました。

老爺心ですね。(^^;

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3572:

どうせ補足なら流通市場による株券の値付けや流動性の付与が発行市場に与える影響まで書くと良いと思います。

流通市場は発行市場に影響を与えているので、流通市場でトヨタの株を買う事は間接的にトヨタを応援していると言っても良いはずです。

おカネの直接的な流れの誤解を正した結果、また別の誤解を生むような気がします。補足の補足が必要になってきますね。

2017.09.05 19:56 さいもん #- URL[EDIT]
3573:

※3572:さいもんさん
おっしゃるように間接的には応援していると言えなくもないでね。
ただ、今回はおカネの直接的な流れの誤解を解くことが狙いなので、その点に絞りました。

2017.09.05 21:52 小黒とら #j72wRO66 URL[EDIT]

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